若年乳がんサバイバーの家族が抱く不安、その要因とケアの必要性

専門家の見解

「愛する人ががんと診断された時、家族は自分自身の健康と幸福を顧みなくなることがよくありますが、がん患者のケアに心配と不安が伴うことはよくわかります」と本日のプレスキャスト(インターネット生放送による記者会見)の司会であるASCO専門員Merry Jennifer Markham医師は述べた。「われわれは介護者が直面する具体的な問題への理解を深め、彼らの不安を上手に聞き出して、問題に対処できるよう手助けする必要があります。がん患者のパートナーが自分自身を大事にすれば、家族全員に利益をもたらすのです」。

ある新分析によると、若年乳がんサバイバーががんと診断されたのち、数年経過しても42%のパートナーが不安感を覚えていることが分かった。研究者らは、効果的でない(不適応)対処、育児の心配などの要因が不安と関連していたと述べる。本知見は、がんの診断が介護者および家族に与える影響を調査するという、現在も展開中の研究の一部であり、介護者への支援拡大の必要性を強調するものである。このことは、がんサバイバーの健康とQOLだけではなく、介護者自身の健康とQOLにも影響を及ぼす。本データは、サンディエゴで開催される2017年Cancer Survivorship Symposiumの一環として発表される。

「がんは一人の身に起こるだけではありません、家族全員に影響を及ぼします」と、本研究の筆頭著者であり、ダナファーバーがん研究所ソーシャル・ワーク部門長のNancy Borstelmann氏(公衆衛生学修士、医療ソーシャルワーカー、認可臨床ソーシャルワーカー)は述べる。「米国で乳がんサバイバーが増加し続ける中、そのパートナーや家族全員の不安に介入し、がん診断後の不可避で、しばしば予測不能な変化に対応できるように支援することが必要です」 。

Borstelmann氏らは、40歳以下でがんと診断された乳がんサバイバーのパートナーに対し、多施設オンラインおよびメール調査を実施した。 パートナーががんと診断されて回答者らはどのように対応したのかを精査するため、Brief COPEと呼ばれる、人がストレスを受けた場合のさまざまな対処法を評価する測定ツールも用いられた。このツールは、診断の受容、ポジティブ・リフレーミング(物事を前向きな枠組みで捉えようとすること)、プランニング(目標を達成するまでの一連の心理および行動)、および心理的サポートの利用など、パートナーが特定の対処法を用いる程度を評価するものである。 調査回答時期の中央値は、パートナーのがん診断後約5年(62カ月)であった。

回答者の大半は男性であり、うち30%以上の人が、少なくとも一度はお互いの関係性をひどく心配し、さらに40%以上の人が現在も不安症状があると報告した。不適応対処をしていると考えるパートナーでは、不安を覚えると報告している可能性が2倍以上高かった。不適応対処には、情緒的ひきこもり、拒否、非難、攻撃などの行動が含まれる。

調査回答者は育児や経済的不安など、追加される生活ストレス要因に対応していると答えているが、これらの要因は、不適応対処に比べると高レベルの不安への関与は強くない。家族やパートナーが何を必要としているのか表せるようにするサポート、共通の課題に関する教育、彼らが前向きに対処できるように促す効果的コミュニケーションへの提言、これらを家族やパートナーに提供する介入策を展開する好機である、と研究者らは強調する。

「われわれはがんケアチームの一員として、パートナーや家族が抱える心の健康などの心配事に確実に対応できるようあらゆる迅速措置を取ります。それは一見小さなことかも知れません。しかしパートナーに『最近はどうですか』と尋ねる言葉は重みがあり、ご自宅での様子や患者さんとの関係について、大切な会話のきっかけとなることができるのです」とBorstelmann氏は述べる。

乳がんは、皮膚がんに次いで米国人女性で最も多いがんである。米国では女性8人に1人が、生涯に乳がんを発症するとされている。さらにがんはより若い年齢で診断されるほど侵襲性が高く、早く進行するため40歳以下の女性は高齢女性よりも予後不良となる傾向がある。

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翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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