Veliparb+化学療法がBRCA変異陽性乳がんに有効

12月6日〜10日に開催された2016年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された第2相臨床試験によると、カルボプラチン+パクリタキセル化学療法にポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤veliparibを追加すると、BRCA1またはBRCA2に遺伝子変異がある局所再発性または転移性乳がん患者の有害事象が増加することなく、全奏効率が改善された。

フロリダ州タンパにあるモフィットがんセンターの准研究員であるHeather S. Han医師は、「BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異を受け継いだ人々は、乳がんや卵巣がんなどを含む 、さまざまな悪性腫瘍を発症するリスクが高いです。BRCA1またはBRCA2に遺伝子変異があるがん細胞は、DNAを修復する能力が低いです。 前臨床試験は、PARP阻害剤を用いてBRCA変異がん細胞におけるDNAの修復における第2段階 を遮断すると、がん細胞がカルボプラチンなどの化学療法剤の影響を受けやすくなることを示しています」と、語った。

「Veliparibを化学療法に追加することで、BRCA変異の乳がん患者の全奏効率が有意に改善し、有害事象が増加しなかったことを認め 、喜ばしく思いました」 。Han氏は次のように続けた。「無増悪生存期間と全生存期間の延長は統計的に有意ではありませんでしたが、この試験は veliparibを化学療法と併用する今後の治験において、このグループの患者にとって有効である可能性を示唆しました。 現在進行中の第3相BROCADE 3臨床試験は、このPARP阻害剤が日常的な臨床治療の一部になるかどうか について、より明確な回答を提供するでしょう 」。

第2相臨床試験では、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異がある患者290人を3つの群に無作為に割り付けた。すなわち、97人をveliparib+カルボプラチ+パクリタキセル、99人をプラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル、94人をveliparib+テモゾロミドに割り付けた。 ここで、Han氏らは、veliparib+カルボプラチン+パクリタキセル群、または、プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル群から得られた知見を報告している。 本試験のこれらの群の患者の50%以上がホルモン受容体陽性乳がん、約40%がトリプルネガティブ乳がんであり、HER2陽性乳がんはわずかであった。 疾患の臨床背景は両群間で均衡していた。

プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル群患者が受けた治療サイクル中央値は10サイクルであった。 Veliparib+カルボプラチン+パクリタキセル群患者の治療サイクルの中央値は12サイクルであった。

Veliparib群の全奏効率は77.8%であったのに対し、プラセボ群では61.3%であった。 Veliparib群の無増悪生存期間の差(14.1カ月対12.3カ月)は統計的に有意ではなかった。 全生存期間の延長傾向も統計的に有意ではなかった(28.3カ月対25.9カ月)。

Veliparibを追加しても毒性は有意に増加しなかった。 最もよくみられたグレード3以上の有害事象は、好中球減少症であり、プラセボ群患者で55%であったのに対して、veliparib群患者では56%であった。 さらに血小板減少症は、プラセボ群患者で26%であったのに対して、veliparib群患者では31%であった。

Han氏の説明によれば、この試験の主な限界は、参加患者数が十分ではなかったため、無増悪生存期間においてありきたりな改善しか検出できなかったことであった。 しかし、同氏は、現在進行中の第3相試験で この課題に取り組む力があることを指摘した。

本試験はAbbVie Inc.社の資金提供を受けた。Han氏は個人的な利益相反はないと述べているが、モフィットがんセンターはAbbVie社、Corcept社、Incyte社、Karyopharm社、Merrimack社、Prescient社、TapImmune社から研究資金を受けている。

翻訳担当者 有田香名美

監修 小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

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