ビタミンD欠乏症は一部の乳がんの転移を促進する可能性

ビタミンD欠乏症は一部の乳がんの転移を促進する可能性

米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

ビタミンDの欠乏は乳がんにおける腫瘍進行や転移に関連する可能性があると新しい試験で示唆されている。

本試験では主に細胞株とマウスを使って行われ、血中ビタミンD濃度とID1遺伝子発現の関連を特定した。ID1は乳がんや他のがん種において腫瘍増殖および転移に関連するがん遺伝子である。

この知見は3月2日付Endocrinology誌において発表された。

ビタミンD(食品やサプリメントから得るか、あるいは日光を浴びると体内に産生される)は、乳房組織や複数個所の体組織においてカルシトリオールというホルモンに変換される。次にカルシトリオールはビタミンD受容体に結合する。ビタミンD受容体は非常に多くの遺伝子を調節するが、この遺伝子の一部にがんに関連しいている。

「非常に多くの大規模試験がビタミンD濃度とがんの転帰との関連性を調べており、得られた知見はさまざまです」と、スタンフォード大学医学部大学院のBrian J. Feldman医学博士は述べた。「私たちの研究は血中ビタミンD濃度がどれだけ低ければ乳がんの増殖や転移を促進する役割を果たす可能性を持つのかを特定することです」。

Feldman医師らはヒトの乳がんを移植したマウスモデルおよび乳がん細胞株においてビタミンD欠乏症を調べた。

腫瘍細胞を注入移植され 、かつ低ビタミンD飼料を与えられたマウスは通常の飼料を与えられたマウスと比較すると、腫瘍が生じるまでの期間が短く、腫瘍サイズも増大することを彼らは発見した。別の実験では、悪性度の高い転移病変をマウスに生じさせる乳がん細胞株ではビタミンD受容体発現が低い一方で、腫瘍転移につながらない細胞株ではビタミンD受容体発現が通常レベルであることを発見した。

追加実験(研究チームがビタミンD受容体発現に影響するよう操作した乳がん細胞を移植したマウスに生じた腫瘍を含む)では、ビタミンD受容体発現レベルが低い腫瘍を有するマウスの半数以上で肝臓への転移がみられた。ビタミンD受容体発現が通常レベルの腫瘍細胞を有するマウスでは転移がんの証拠は得られなかった。

「この結果は、ビタミンD/ビタミンD受容体シグナルの損失は、細胞を非転移性から転移性へと変化させるのに十分であると示唆しています」と彼らは述べた。

通常飼料あるいはビタミンD欠乏飼料を与えたマウスにおける腫瘍についてのさらなる解析では、乳がん転移と関連するID1遺伝子の高発現を見出した。ID1遺伝子はビタミンD欠乏飼料を与えられたマウスに高い頻度で見られた。これはビタミンD受容体発現を低くするよう操作された乳がん細胞においても同様であった。

追加研究はビタミンD受容体がID1遺伝子を調節していることを示唆している。またビタミンD受容体シグナルが働きかけていると思われるID1遺伝子の部分を特定した。

研究者らはこの知見がヒトの乳がんに当てはまるかの判断を試みた。ヒト乳がん細胞株を広く研究する中で、細胞の治療にカルシトリオールを使うことでID1タンパク質の発現を減らすことが示された。また早期ステージの乳がんを有する女性の小規模臨床試験から得た腫瘍において、ビタミンDおよびID1発現を解析し、高レベルの血中ビタミンDが腫瘍における低レベルのID1発現と関連することがわかった。(本試験は早期で中止となったため、患者の転帰についてのデータは得られていない)。

米国国立がん研究所(NCI)の婦人悪性腫瘍科のチーフであるStanley Lipkowitz医学博士は、この試験から得られた知見は「驚くべき」と述べた。しかし解決すべき重要な疑問はまだ残っている。この知見がヒトに当てはまるのか、またそうである場合、特定の乳がんにのみ当てはまるのかを決定的に示すためにはさらなる研究が必要であると博士は述べた。

また知見を広げるためにも研究を重ねなければならないと同氏は続けた。例えば、本試験ではビタミンD欠乏症を治療することで乳がんを有する女性の転帰にベネフィットがあるのかは明らかになっていない。

この試験から得られた知見を別にしても、乳がん女性にとってビタミンDを通常レベルに保つことは重要なことであるとFeldman医師は強調した。

「60歳以上の女性では骨粗鬆症のリスクが増し、乳がん治療に使われる薬物療法によってこのリスクがさらに高くなります」と述べた。「ビタミンDレベルを通常に保つことは特に乳がんの女性にとり、今回私たちが発見した腫瘍に対する効果の可能性とは別に、骨の健康を最適化するために重要なことなのです」。

原文

翻訳担当者 岡田章代

監修 原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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