白血球比率の高値が早期乳がん再発の高リスクと関連―ESMO Openプレスリリース
トピック:乳がん
2種の免疫細胞の比率が高いことが初期乳がん診断後の再発高リスクと関連していることが、国際女性デー(3月8日)の前日にESMO Openオンライン版に発表された。この種の研究では初めての発見となる。
前向き試験によってこの関連性が確認されれば、本結果は将来の治療やモニタリングの戦略指針となり得ると言われている。
膨大なエビデンスにより、数種のがんの発生と進行には炎症が関与していることが示されており、リンパ球に対する好中球の比率(好中球数/リンパ球数、NLRと略す)が重要であることが示唆されている。
好中球とリンパ球は、がんを含む有害な侵入物に対する免疫応答の一種として動員される白血球である。
複数のがん種での研究で、NLRが高いと生存予後が不良であることが報告されている。しかし、乳がん女性を対象とした研究で決定的な結論が得られたものはほとんどない-これらの研究では主にアジア系民族を対象にしており、他民族よりも一般的に生存期間が長いことがその理由でないかと言われている。
研究チームでは、NLRが無病生存期間と関連しているか調べるため、300人(9人を除き35歳超)の白人女性の健康状態を、診断から最大15年間(1999~2015年)追跡調査した。
対象となった女性はすべてステージIまたはIIで定義される初期乳がんであり、他部位への転移は認められなかった。
診断後、治療を開始する前の採血で血球数を測定した結果、対象患者のうち134人がNLR低値(1.97以下)、166人がNLR高値(1.97超)であった。
15年後、対象患者の37人(12%)で他部位にがんの再発が認められた。
NLR低値の患者ではその後の健康診断で健康状態が良好であり、1、3、6、9、12、15年で再発が認められなかった患者の割合はそれぞれ100%、98.9%、91.7%、82.7%、82.7%および82.7%であった。
これは、NLR高値の患者の同じ評価時期の無再発割合それぞれ99.4%、94.3%、84.5%、69.2%、66%および51.4%と比較して高い。
研究チームでは、大きな影響を及ぼす可能性がある他の要因を考慮するためさらに解析を進めた。その結果、閉経前、腋窩リンパ節へのがん転移(N1)およびNLR高値が独立して再発のリスクと関連していることが見出された。
本結果をさらに裏付けるために、研究チームでは傾向スコアマッチング解析(効果を受ける予測因子を考慮して介入効果の推定を試みる統計学的なマッチング手法)を行った。この手法を患者226人(NLR高値とNLR低値半々)に適用した結果、閉経前、腋窩リンパ節へのがん転移あり(N1)およびNLR高値がそれぞれ独立して予後不良と関連していることが確認された。
本研究は観察研究であるため、因果関係に関して確固たる結論を導き出すことはできず、後ろ向きの研究でもあった。しかし、研究チームによると、統計学的マッチングにより得られた関連性が強固となり、さらにこの関連性は他のがん種でも認められているという。
「がん患者のNLRと転帰との関係は一見単純に見えますが、おそらく複雑で多因子が関与するプロセスであり、そのほとんどがまだ解明されていません」と研究者らは述べる。
「簡単に言えば、NLR高値は、血管新生の促進(新しい血管の形成)、がんの増殖および転移(拡がり)における全身性炎症の役割を表している可能性があります」と研究者らは言う。
ESMO Open誌編集長のChristoph Zielinski教授は次のようにコメントしている。「本結果が初期乳がん患者を支援する新たな方法の可能性を示していることがわかり感動的です。この分野で活躍している研究者が世界中でこの発見の確認を目的とした共同研究を築いていくことを願っています」。
Notes for editors:
研究: Neutrophil to lymphocyte ratio (NLR) for prediction of distant metastasis-free survival (DFMS) in early stage breast cancer: a propensity score-matched analysis(リンパ球に対する好中球の比率(NLR)による初期乳がんの無遠隔転移生存期間(DFMS)の予測:傾向スコアマッチング解析)
doi 10.1136/esmoopen-2016-000038
Journal: ESMO Open
http://esmoopen.bmj.com/lookup/doi/10.1136/esmoopen-2016-000038
原文掲載日
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