早期浸潤性乳がんの治療決定のためのバイオマーカー使用に関する新ガイドライン

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、早期浸潤性乳がんで、ホルモン受容体およびヒト上皮成長因子2(HER2)受容体の状態がわかっている女性に対する新たな診療ガイドラインを公表した。本ガイドラインには、術後補助全身療法を決定する際の指針となる乳がんバイオマーカー検査の適切な使用に関して、科学的根拠に基づく推奨が含まれている。

「この高精度医療(precision medicine)の時代では、診療の指針となるバイオマーカーの役割は、従来よりも大きくなっています。この5~10年の間に、幅広く多数のバイオマーカーが新たに見出されてきていますが、その全てに、臨床的有用性を示す十分なエビデンスがあるわけではありません」と、本ガイドラインを作成したASCO専門家委員会の共同議長、Lyndsay N. Harris医師は述べた。「医師は、どのバイオマーカー検査を行う必要があるのかについての十分な情報を、これら最新の推奨から得ることができます。しかし、患者の診療にバイオマーカーを用いるだけではなく、個人に合わせた治療計画を作成するために、医師と患者が話し合いを続けることも大切です」。

本ガイドラインの推奨は、腫瘍内科学、放射線腫瘍学、地域腫瘍学、統計学の専門家および健康転帰の研究者らで構成された集学的な専門委員会によって作成された。さらに、患者の視点を盛り込むため、がんサバイバーも加えられた。本委員会は、2006年1月~2015年9月までに発表された文献のシステマティックレビューを行い、関連する研究50件を同定した。

ガイドライン推奨のキーポイント

  • 以下のバイオマーカー検査は、特定の乳がん患者の術後補助全身療法を決定する際の指針として使用しても良い。エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2受容体、Oncotype DX、EndoPredict、PAM50、Breast Cancer Index、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1。
  • エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2受容体以外のバイオマーカーは、特定の薬剤または治療レジメンを選択する際の指針として使用すべきではない。
  • 治療を決定する際には、病期、併存疾患、患者の希望も考慮すべきである。

「早期浸潤性乳がん女性に対する術後補助全身療法の決定の指針となるバイオマーカーの使用:米国診療ガイドライン(Use of Biomarkers to Guide Decisions on Adjuvant Systemic Therapy for Women with Early-Stage Invasive Breast Cancer: American Society of Clinical Practice Guideline)」と題される本ガイドラインは、本日Journal of Clinical Oncology誌で発表された。

これらの推奨を理解する上での手掛かりとなる患者向けの情報は、以下のウェブサイトで入手可能である。
www.cancer.net/recommendations
本ガイドラインは、補足資料と併せて以下のウェブサイトで入手可能である。
http://www.asco.org/guidelines/adjuvantbreastmarkers

関連するASCOガイドラインは以下のとおりである。

  • 転移性乳がん女性に対する全身療法の決定の指針となるバイオマーカーの使用:ASCO診療ガイドライン
  • 乳がんにおけるヒト上皮成長因子受容体2を用いた検査に対する推奨:改訂ASCO/米国病理学会(College of American Pathologists:CAP)診療ガイドライン
  • 乳がんにおけるエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体の免疫組織化学検査に対するASCO‐CAPガイドライン推奨

ASCOは、ASCO ガイドライン Wiki(www.asco.org/guidelineswiki)を通して、腫瘍専門医、臨床医そして患者からのガイドラインに関するフィードバックを奨励している。

翻訳担当者 生田亜以子

監修 原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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