FDAが乳がん化学療法による脱毛予防にDigniCap販売を承認

速報

米国食品医薬品局(FDA)は本日、化学療法を受ける女性乳がん患者の脱毛(脱毛症)を減らせる初めての冷却キャップ(商品名:DigniCap[ディグニキャップ])を米国内で販売することを承認した。

脱毛は、乳がんの治療と関連する特定の種類の化学療法で通常みられる副作用である。毛髪は徐々に部分的あるいは完全に抜け落ちるか、または薄くなる可能性がある。がん治療による脱毛は、通常は一時的なものであるが、この種の副作用を最小限に抑えるか、または軽減することは、治療全体にとって重要である。

「化学療法誘発の脱毛を最小限に抑え、乳がん患者のQOLに寄与できる製品を目の当たりするのは、大変に喜ばしいことです」とFDAの医療機器・放射線保健センター医療機器審査室長代理を務めるWilliam Maisel医師(公衆衛生学修士)は述べた。「化学療法の副作用の管理は、全体的な健康および回復にとって重要なことです」。

Dignitana社のDigniCap冷却装置は、脱毛症を誘発する化学療法剤の投薬を受ける乳がん患者に対し、化学療法中の脱毛症の頻度および重症度を軽減する。この装置は、化学療法中に頭部装着型の冷却キャップへ冷却された液体を循環させるコンピューター制御装置である。冷却キャップは、ネオプレンゴムで作られたセカンドキャップでさらに覆われており、そのセカンドキャップが冷却キャップの位置を固定し、冷却を失わない様に断熱カバーとしての機能を果たしている。

冷却作用は頭皮内の血管を収縮させ、理論的には毛包(毛根)の細胞に到達する化学療法剤の量を減らすと考えられている。また、冷却することで毛包の活性を抑え、細胞分裂を減速させ、化学療法による影響を受けにくくする。こうした作用の組み合わせが細胞への化学療法剤の影響を軽減させ、脱毛を減らすと考えられている。DigniCapが効果を発揮しない化学療法レジメンも一部存在する。興味のある患者さんは、かかりつけ医に相談することを勧める。

本冷却装置の有効性は、脱毛との関連性が認められている化学療法レジメンを用いた化学療法中の病期1期および2期の女性乳がん患者122人を対象に調査された。この試験で得られたデータは、一部の3期および4期の乳がん患者にも適用できる可能性がある。なぜなら、本試験に登録された患者と同等のベネフィット・リスク特性を3期および4期の患者も有する可能性があるからである。主要評価項目は、化学療法の最終サイクルの後1カ月間(3~6週間)に標準化された写真を用いた、女性患者本人による脱毛の自己評価であった。DigniCapによる治療を受けた患者のうち66%以上が、脱毛が半分以下にとどまったと報告した。

これらの患者にとっての脱毛予防は、QOLにとって著しい利益があり、冷却キャップを装着することで化学療法剤が頭皮内の遠隔転移している乳がん細胞を見逃すリスクは、非常にまれである。

冷却装置による最も頻度の高い副作用には、冷却による頭痛、首や肩の不快感、寒気、長期間にわたる冷却キャップの装着に伴う痛みなどである。

FDAは、新規の分類手順、すなわち合法的に販売されている他のいかなる機器とも実質的に同等ではない、低度から中等度のリスクの新しい機器のための審査制度を通じてDigniCap冷却装置のデータを審査した。

DigniCap冷却装置は、スウェーデンのルンドにあるDignitana社で製造される。

連邦政府保健福祉省内の機関であるFDAは、公衆衛生の保護を目的として、医薬品、動物用医薬品、ワクチンおよび他の生物製剤ならびに医療機器の安全性と有効性の確保に努めている。FDAは、米国の食糧供給の確保や食品安全、化粧品、栄養補助食品、電磁波を放出する製品の安全性を保証し、タバコ製品を規制する責務も担っている。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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