アナストロゾールを投与された乳がんDCIS患者の症状は、タモキシフェン投与患者と異なる(サンアントニオ乳がんシンポジウム2015)

アナストロゾールを投与された乳がんDCIS患者の症状は、タモキシフェン投与患者と異なる(サンアントニオ乳がんシンポジウム2015)

米国がん学会(AACR) プレスリリース

両群ともQOLは類似していると報告された

12月8~12日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム2015で発表されたデータによると、非浸潤性乳管がん(DCIS)に対して腫瘍摘出手術+放射線治療を受けた閉経後の女性の術後治療としてのアナストロゾールとタモキシフェンを比較する第3相試験であるNSABP B-35試験において、副次的評価項目の患者報告アウトカム(PRO)の解析で、両群で生活の質(QOL)には差がなかったものの、症状に関してはいくつかの差があったことが判明した。

本研究で、両群間で予測された症状の差が示された。タモキシフェンの治療ではほてりなどが、アナストロゾールの治療では膣の症状、筋骨格系の症状などがより多くみられた。

「NSABP B-35試験では、ホルモン受容体陽性のDCISを有する閉経後の女性患者3,104人が登録されました。主要評価項目は、タモキシフェンに対するアナストロゾールの優越性を検証することでした。アナストロゾールは乳がん無再発期間において、タモキシフェンに対してわずかではありますが、統計学的に有意に良好でした。そして、60歳未満の女性に対して最も有効でした。両群間で全生存率に差はありませんでした」とカリフォルニア大学ロサンゼルス校の医学公衆衛生学部およびJonsson総合がんセンターの著名な教授であるPatricia A. Ganz医師は述べた。「本試験の副次的評価項目はQOLおよび症状で、PROとして測定されました。両群で副作用プロファイルが異なっているため、臨床試験の結果に関する意思決定のための情報に加えるために、女性患者から経験について聴取することは非常に重要でした」。

PROデータとは、身体的または感情的な機能(QOL)や、ほてり、膣乾燥、筋肉や関節のうずきや痛みなどのさまざまな症状の発現について、臨床試験に参加したそれぞれの患者から得た情報であるとGanz医師は説明した。本試験が二重盲検であったため、症状やQOLの評価においては女性患者らがどちらの薬剤を内服したかを知ることに伴うバイアスはなかったと彼女は付け加えた。「本試験からの情報は、DCISと診断される未来の女性患者らにとって、医師と共にどちらの薬を内服するかを決定するために重要なものです」とGanz医師は述べた。

Ganz医師らは、NSABP B-35試験のPROに組み入れられた1,193人の患者からのデータを用いた。QOLおよび症状のデータは、アナストロゾールまたはタモキシフェンへのランダム化前、および5年間の治療中は6カ月ごとに、治療終了後は12カ月ごとに収集された。QOLは、SF-12の身体的側面、精神的側面のサマリースコアを用いて測定された。症状は、BCPT症状チェックリストおよび他の標準化された方法を用いて測定された。患者は60歳未満または60歳以上の2群に分けられた。

治療後の5年間、QOLに差はなかった。しかし、ほてりの重症度はタモキシフェン投与群の方がアナストロゾール投与群より高く、経時的に変化していった。6~24カ月の時点での筋骨格痛、および膣症状は、アナストロゾール投与群の方がタモキシフェン投与群より重症であった。性機能は、アナストロゾール投与群の方がタモキシフェン投与群よりわずかながら悪化した。Ganz医師によると、両剤とも身体的または感情的な健康や鬱の悪化はなく、安全であることが分かった。全ての症状が、60歳以上より60歳未満で悪かったと彼女は付け加えた。

「両剤はいずれも優れており、乳がん再発のリスクを減少させることが可能です。医師や患者らは、適切な治療選択のために、試験の主たる結果とともにこの情報を用いる必要があります。これは個別化医療または精密医療の一部なのです」とGanz医師は述べた。

本試験は、米国国立がん研究所およびアストラゼネカ社から助成を受けた。Ganz医師は、利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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