ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
ルミナールA以外の乳がんでは効果が認められた
閉経前のルミナールAタイプの浸潤性乳がん女性は、術後化学療法の有無に関わらず10年無病生存率がほぼ同じであることが、2015年サンアントニオ乳がんシンポジウム(12月8~12日)で発表されたDBCG77B第3相試験の結果により明らかになった。
「ルミナールAは乳がんの比較的一般的なサブタイプであり、ホルモン受容体[エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)]の高い発現と、細胞増殖マーカーKi67と腫瘍性蛋白HER2の低い発現によって定義される、乳がんで最も予後の良いタイプである」とカナダ、バンクーバーのブリティッシュコロンビア大学の病理学教授 Torsten Nielsen医学博士は述べた。
「私たちは、分子的にリスクの低いルミナールA乳がんの女性が本当に化学療法の恩恵を受けているのか、という臨床上の疑問点に対して答えを出したかった」とNielsen氏は続けた。「新たな試験を始めるとその答えが出るまで10年間は待たなければいけないので、その代わりに、将来の研究のために組織検体が保存されている昔のすでに終了した試験を利用した」。
デンマーク乳がん臨床試験グループ(Danish Breast Cancer Cooperative Group)の77B試験では、1977年から1983年の間に、腫瘍径5cm以上でリンパ節転移陽性の浸潤性乳がん1146人の閉経前女性が、2つの化学療法群と2つの非化学療法群に無作為に割り付けられた。化学療法群の女性は、シクロホスファミド単剤療法、または、シクロホスファミド/メソトレキセート/フルオウラシル併用療法のどちらかを受けた。すべての女性は放射線療法を受けたがホルモン療法は受けなかった。
Nielsen氏らは709人のER、PR、HER2、Ki67の発現を調べ、うち165人をルミナールAと判定した。
研究者らは、ルミナールA乳がんの女性では、化学療法を受けた群とそうでない群の10年無病生存率に差がないことを発見した。一方でルミナールAではない患者(ルミナールBタイプ、 HER2タイプ、トリプルネガティブタイプ)では、化学療法を受けた場合、10年間で再発する確率は、化学療法を受けなかった場合と比べて50%低かった。
Nielsen氏は、この試験では術後化学療法としてホルモン療法を受けた患者はいなかったと説明した。その点に関してはこの臨床試験で用いられた対象は現在の標準治療を反映していないかもしれない。しかし、ホルモン療法は、腫瘍の化学療法感受性を低下させることが知られている。「私たちの臨床試験でルミナールA乳がん女性が化学療法の恩恵を受けなかったことを考えると、同様の腫瘍のタイプの女性が、ホルモン療法を受けていたとしても、化学療法から恩恵を受けることはないだろうと確実に類推できる」と同氏は述べた。
「ルミナールBタイプやベーサル(トリプルネガティブ)タイプ乳がんの女性は、ルミナールA乳がんの女性とは対照的に、シクロホスファミドを基本とした術後化学療法から大きな恩恵を受けていたため、この試験全体では、化学療法の有効性が示された」とNielsen氏は言った。「私たちは異なる治療に無作為に割り付けられることに同意してくれたデンマークの女性たちに感謝したい。彼女たちは、数十年後の私たちの乳がんの科学的理解に貢献し、新しい世代の女性たちに、どの治療が必要で、どの治療が必要でないかを決定するためのより良い情報を提供してくれた」と彼は加えた。
この臨床試験は、カナダ乳がん基金とIM Daehnfeldt 基金とデンマーク研究基金によって支援されている。Nielsen氏はBioclassifier LLCの持分権を持っている。そしてこの臨床試験には関与していないNanoString Technologiesと特許を共有し、その顧問を務め、使用料や謝礼を受け取っている。
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