イムルネストラント+アベマシクリブ併用が、CDK4/6阻害薬治療後の進行乳がんに有効
イムルネストラント[Imlunestrant]とCDK4/6阻害薬アベマシクリブ(販売名:ベージニオ)の併用は、CDK4/6阻害薬による治療後に病勢が進行したエストロゲン受容体(ER)陽性かつヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性の進行乳がんに対し、イムルネストラント単独と比較して有意な無増悪生存期間(PFS)の改善を示した。結果はEMBER-3試験のサブグループ解析によるもので、2025年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)乳がん会議で報告された。
今回の解析では、EMBER-3試験に登録された患者のうち、CDK4/6阻害薬による治療を受けたことのある患者279人(併用療法群で139人、イムルネストラント単独療法群で140人)を対象とし、ESR1変異、PI3K経路変異、または内臓転移の有無など、臨床的に重要なすべてのサブグループにおける無増悪生存期間(PFS)に着目した。
PFS中央値は全体で、イムルネストラント+アベマシクリブ併用群が9.1カ月、イムルネストラント単独群が3.7カ月であった(ハザード比0.51)。また、ESR1遺伝子変異、内臓転移、骨転移の有無によるサブグループにおいても、併用療法の効果の方が一貫して高かった。
発表者で、バルデブロン大学病院(スペイン)のCristina Saura医学博士は、この併用療法は有効性と忍容性を兼ね備えた経口の標的療法であり、ESR1やPI3K経路変異の有無、内臓転移の有無といった臨床的・生物学的な背景を問わず有効だと述べた。
ウィーン医科大学のRupert Bartsch医師は、この併用療法は、CDK4/6阻害薬の治療歴があっても有効で、特にESR1変異例では「セカンドライン治療としてこれまで報告されている中で最も長い無増悪生存期間(PFS)が得られた」とコメントしている。
この結果は、CDK4/6阻害薬治療後の進行乳がんに対して、新たな標準治療となる可能性を示す重要なエビデンスとして注目されている。
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当者 平沢沙枝
- 原文掲載日 2025/05/16
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