アナストロゾールは早期乳がんにおける再発予防においてタモキシフェンより有効

キャンサーコンサルタンツ

アナストロゾール(アリミデックス)は、乳がんの中でも一般的ながんである非浸潤性乳管がん(DCIS)を有する患者に対し、タモキシフェンに比べて再発防止作用に優れていることが、2015年米国臨床腫瘍学会年次総会(5月29日~6月2日、イリノイ州シカゴ)で発表され、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。

DCISは、乳管内に異常細胞が認められるが、乳房における乳管外の他の組織へは拡がっていない早期乳がんである。一般にマンモグラフィ検査で検知されることが多く、治療をしなければ浸潤性乳がんに進行することがある。

タモキシフェンは、エストロゲン受容体陽性DCISを有する閉経後女性に対し、再発予防の標準治療薬として10年以上使用されてきたが、タモキシフェンより効果の期待できる薬剤としてアナストロゾールが浮上している。これらの薬剤はともに、がんの再発を誘発するエストロゲンの働きを阻害するが、作用機序は異なっており、タモキシフェンがエストロゲンとがん細胞の結合を阻害するのに対し、アナストロゾールはエストロゲンの生成を抑制する。

このほど、エストロゲン受容体陽性DCISを有する閉経後女性に対する再発予防を目的として、アナストロゾールとタモキシフェンの比較試験が米国の複数施設において実施された。この試験では、DCIS患者で腫瘍摘出術および放射線療法による治療を受け、がんの残存が確認されていない3,104人を対象に、アナストロゾール1 mg/日またはタモキシフェン20 mg/日を5年間投与した。

10年後の結果では、両薬剤に乳がん再発の抑制効果がみられた。再発率はアナストロゾール投与群がタモキシフェン投与群に比べて低く、再発がみられなかった患者の割合は、アナストロゾール投与群が93.5%、タモキシフェン投与群が89.2%であった。乳がんによる死亡は、アナストロゾール投与群が5人であったのに対し、タモキシフェン投与群は8人で、アナストロゾール投与群が少なかった。同様に浸潤性乳がんへの進行についても、アナストロゾール投与群が 39人であったのに対し、タモキシフェン投与群は63人で、アナストロゾール投与群が少なかった。

アナストロゾールは、若い女性に対してより奏効するとみられ、60歳未満の女性では有効であるが、60歳以上では有効ではなかった。

この試験において、早期乳がん患者の再発率はアナストロゾール投与群で低かったが、タモキシフェン投与でも再発リスクが減少した。以上の所見に基づき、早期乳がん患者において再発リスクの減少に有効な薬剤の選択肢は2種類あり、そのうちアナストロゾールは無病生存を改善する可能性がより高いことが明らかになった。

参考文献:
Margolese RG, Cecchini RS, Julian TB, et al. Primary results, NRG Oncology/NSABP B-35: A clinical trial of anastrozole (A) versus tamoxifen (tam) in postmenopausal patients with DCIS undergoing lumpectomy plus radiotherapy. Journal of Clinical Oncology. 33, 2015 (suppl; abstr LBA500).


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 小石みゆき

監修 原 文堅 (乳腺科/四国がんセンター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

Her2低発現乳がんに対するトラスツズマブ・デルクステカンの副作用解析の画像

Her2低発現乳がんに対するトラスツズマブ・デルクステカンの副作用解析

HER2低発現の転移乳がんに対する抗体薬物複合体であるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd、販売名:エンハーツ)の画期的ランダム化第3相試験に基づく安全性解析の結果、嘔吐と吐気の発症が非...
ESMO乳がん会議2023の画像

ESMO乳がん会議2023

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)ESMO乳がん会議2023は、2023年5月11日~13日、ドイツのベルリン、およびバーチャルプラットフォームを通じオンライン上で開催される。プログ...
米国黒人女性では、乳がん検診推奨年齢50歳では遅いの画像

米国黒人女性では、乳がん検診推奨年齢50歳では遅い

ニュース米国では、人種や民族に関係なく、米国民女性に50歳から隔年で乳がん検診を受けることを推奨している。しかし、新たな解析によると、黒人女性は42歳から検診を開始する必要があるとし、...
早期HER2陽性乳がんの術後パクリタキセル+トラスツズマブは10年後も高い効果を維持の画像

早期HER2陽性乳がんの術後パクリタキセル+トラスツズマブは10年後も高い効果を維持

ダナファーバーがん研究所リンパ節転移がなく、腫瘍サイズが小さいHER2陽性乳がん患者に対する標準治療を確立した臨床試験の追跡調査結果が、この治療の長期的な有効性を裏づけている。

試験参加...