プラチナベースの化学療法は転移性トリプルネガティブ乳がんに有効

キャンサーコンサルタンツ

プラチナベースの化学療法は、特にBRCA1およびBRCA 2 変異陽性患者の転移性トリプルネガティブ乳がん治療に有効であるとみられる。Journal of Clinical Oncology誌にて上記の知見が報告された。

エストロゲン、プロゲステロン暴露により増殖刺激を受けず、HER2(ヒト上皮成長因子受容体)が陰性の乳がんをトリプルネガティブ乳がんと定義する。トリプルネガティブ乳がんは他の乳がんより悪性化する傾向にあり、治療の選択肢がほとんどない。

プラチナベースの化学療法は、トリプルネガティブ乳がん患者の一部において治療選択肢となる可能性がある。研究者らは近年、プラチナ製剤はどのような患者で効果が期待できるのか、その同定方法の研究に関心を寄せている。

研究者らは今回、転移性トリプルネガティブ乳がん患者におけるプラチナ化学療法剤シスプラチンとカルボプラチンの効果を評価するための臨床試験を実施した。その目的はプラチナ製剤の効果を評価することに加え、どのような患者に効果が期待できるかについての確定方法を調査することであった。

臨床試験には転移性トリプルネガティブ乳がん患者86人が参加し、1次あるいは2次治療としてプラチナ製剤が投与された。43人の患者にはシスプラチンが、また43人の患者にカルボプラチンが投与された。

全患者のうち、25.6%がプラチナ製剤に奏効した。シスプラチンの奏効率は23.6%であり、カルボプラチンの18.7%よりも優れていた。

患者のBRCA変異状態はプラチナ製剤への感受性に影響があると思われた。BRCA1およびBRCA2変異陽性患者11人中、54.5%が治療に奏効した。BRCA変異陰性患者66人中、何らかのゲノムの不安定あるいはBRCA類似の遺伝子変異を伴う32人は、プラチナ製剤により奏効しやすいと考えられる。

研究者らは、プラチナ製剤は転移性トリプルネガティブ乳がん治療に効果があると結論づけた。BRCA変異陽性患者で最も効果が期待でき、ゲノムの不安定もしくはBRCA類似の遺伝子変異を伴うBRCA変異陰性患者でも効果が得られる可能性がある。以上の知見により、このような患者を対象としたプラチナベース化学療法の研究を推進する必要がある。

参考文献:

Isakoff SJ, Mayer EL, He L, et al. A Multicenter Phase II Clinical Trial of Platinum Monotherapy With Biomarker Assessment in Metastatic Triple-Negative Breast Cancer. Journal of Clinical Oncology. 10.1200/JCO.2014.57.6660.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 岐部幸子

監修 原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【ASCO2025】イナボリシブ併用療法で、進行乳がんの生存延長と化学療法の遅延が可能にの画像

【ASCO2025】イナボリシブ併用療法で、進行乳がんの生存延長と化学療法の遅延が可能に

ASCOの見解(引用)「INAVO120試験では、未治療でPIK3CA変異を有するホルモン受容体陽性転移乳がん患者さんの生存期間を有意に改善する分子標的治療レジメンの有効性が示...
転移予測にがん細胞の「くっつきやすさ」を評価ー乳がんDCISで研究の画像

転移予測にがん細胞の「くっつきやすさ」を評価ー乳がんDCISで研究

研究者らは、他の部位にまだがんが転移していない患者の治療方針について、腫瘍医がより良い判断を下すのに役立つと期待される装置を開発した。この装置は、腫瘍サンプル中のがん細胞の「接着性(く...
乳がん化学療法による神経障害にアルゼンチンタンゴ ダンス療法の画像

乳がん化学療法による神経障害にアルゼンチンタンゴ ダンス療法

化学療法の副作用としてよくみられる神経障害を伴う乳がんサバイバーに、アルゼンチンタンゴをアレンジしたダンス療法が自然なバランスと感覚を取り戻す助けとなっている。化学療法によって変化した...
浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性の画像

浸潤性乳がんの治療に手術不要の可能性

薬物治療後の乳房手術を省略しても、患者は5年後もがんのない状態を維持していたネオアジュバント(術前)化学療法と標準的な放射線治療で完全奏効を示した早期乳がん患者にとって、手術は...