カペシタビンによる単剤化学療法は高齢の早期乳癌患者の生存を改善しない
標準化学療法による毒性が著しい、中等度から高リスクの高齢の早期乳癌患者に対し、標準的化学療法薬よりも副作用が少ないカペシタビンの単剤化学療法を行なった第3相ICE試験の結果、転帰の改善が認められなかったことが、サンアントニオ乳癌シンポジウム(2014年12月9日〜13日)で発表された。
「本試験では、ビスフォスフォネート剤ibandronate(イバンドロネート)の投与を受けている高齢の早期乳癌患者に対し、カペシタビンによる単剤化学療法を行いました。61カ月後の追跡調査の結果、カペシタビンとイバンドロネートの併用投与群とイバンドロネート単剤投与群間で無病生存割合および全生存割合に差は認められませんでした」とGerman Breast Groupの会長で、ドイツ・フランクフルト大学婦人科教授のGunter von Minckwitz医師は述べた。
また、von Minckwitz医師は、「併用化学療法は高齢者患者においても適切な支持療法を併用して行われるべきです。われわれがイバンドロネートの投与を行ったのは、特に化学療法施行後、高齢者患者の多くに骨減少症や骨粗鬆症がみられるためです。また、ビスフォスフォネート系薬剤には乳癌転移を予防する可能性もあります」とも述べた。
von Minckwitz医師によると、新たに乳癌の診断を受ける患者の約50%が65歳以上の女性であるが、臨床試験への参加は少なく、虚弱な高齢者患者はアンスラサイクリン系薬剤やタキサン系薬剤などを使用した従来の化学療法による治療を受けることができない。転移性乳癌患者を対象に以前実施されたCALGB 49907試験のサブグループ解析の結果、カペシタビンの高齢者患者に対する良好な忍容性が示されており、今回の試験実施の論理的根拠の1つとされた。
ICE試験では、2004年から2008年の間に試験に組み入れられた64歳から88歳の乳癌患者1,358人のうち、677人が6サイクルのカペシタビンとイバンドロネートの併用投与群に、681人がイバンドロネート単剤投与群に無作為に割り付けられた。両群共に約80%がホルモン受容体陽性患者であり、標準治療の内分泌療法を受けた。
本試験の主要評価項目は無病生存割合で、副次的評価項目は全生存割合ならびにコンプライアンスおよび安全性であった。
3年後の無病生存割合(カペシタビン投与群85%・対照群84%)と5年後の無病生存割合(カペシタビン投与群79%・対照群75%)いずれにおいても、両群間で差は認められなかった。また3年後の全生存割合(カペシタビン投与群95%・対照群94%)と5年後の全生存割合(カペシタビン投与群90%・対照群88%)においても両群間で差は認められなかった。
カペシタビンによる治療を中止した患者の割合は、有害事象によるものが約8%で、その他の理由によるものも8%であった。
グレード3または4の有害事象が認められた患者の割合は、イバンドロネート単剤投与群で8.7%であったのに対し、カペシタビンとイバンドロネートの併用投与群では31%であった。
本試験の実施にあたりRoche社およびAstraZeneca社からの資金提供があり、研究費および薬剤がvon Minckwitz医師の施設に提供された。
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