乳房温存療法は乳房切除術より優れている可能性

乳房温存療法は乳房切除術より優れている可能性

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乳癌は、米国だけで年間約40,000人の女性の命を奪っている。早期乳癌とは、原発巣の部位から転移していない癌のことである。早期乳癌患者、特に腋窩(腕の下)リンパ節まで癌が転移していない患者(リンパ節転移陰性)の場合、現行の標準治療選択肢による治癒率は高い。

早期乳癌患者の標準治療としては、乳房温存療法(BCT)と呼ばれる、癌切除と切除後の放射線治療から成る治療法が一般的である。乳房切除術とBCTは早期乳癌の治療法として同程度の効果があると長い間みなされ、どちらを実施するかは多くの場合、個々の女性に委ねられている。

このほどMDアンダーソンがんセンター(MDACC)の癌研究者による試験の結果が、サンフランシスコ開催のASCO乳癌シンポジウム2014で公表された。乳癌の治療法が違っても生存の可能性は同じであるという従来の考え方に異議を唱える内容で、試験の著者は乳癌に関する既知の治療基準を定期的に再評価することの重要性を強調した。

MDACCの外科腫瘍学准教授Isabelle Bedrosian博士は、乳房切除術はもはや主力の乳癌治療選択肢として広く認識されるべきではないと語る。実際、腫瘍摘除および放射線治療から成る乳房温存療法により、生存の可能性が高くなることがある。Bedrosian博士および同僚研究者らは、腫瘍の生態的特性に沿って患者の外科的療法を選択すれば生存利益の可能性が顕著に変わる可能性があると仮定した。

これを評価するために、研究者らは16,000人以上の早期乳癌女性患者を評価する後方視研究を行い、BCTを選択した女性の生存率が最も高いということを発見した。BCTを選択した女性の5年全生存率は96%であったのに対して、乳房切除術を受けた女性では90%あった。これらの所見は、同様にBCTの有利性を示す結果を得た他の研究を裏づけるものである。

医師らは、BCTアプローチの一部として行う放射線治療が主要要因であると考える。しかし、これらの結果は、今年初めにLancet誌で発表された別の試験と大いに異なる。その報告では、乳癌がリンパ節に転移していない女性において放射線治療は有益性がなく、その後の転帰は乳房切除術を受けた女性と同様であった。

Lancet誌の報告は、今回のMDACCの報告と比較してかなり少ない患者数で評価していることから、この問題を解明するためには、乳房切除術とBCTを直接比較する研究が必要と思われる。しかし、今のところ、治療選択肢を検討中のリンパ節転移陰性早期乳癌女性はBCTを積極的に検討するべきである。なぜなら、BCTでは乳房切除術単独よりも良好な結果が得られ、乳房切除術より劣るということはなさそうであるからである。

参考文献:
Parker C, Lin HY, Shen Y, et al. Effect of hormone receptor status and local treatment on overall survival for early-stage breast cancer.J Clin Oncol 32, 2014 (suppl 26; abstr 60)
EBCTCG (Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group). Effect of radiotherapy after mastectomy and axillary surgery on 10-year recurrence and 20-year breast cancer mortality: meta-analysis of individual patient data for 8135 women in 22 randomised trials. The Lancet. Published early online March 19, 2014. doi:10.1016/S0140-6736(14)60488-8


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翻訳担当者 有田香名美

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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