術前化学療法への反応性と腫瘍タイプは乳癌における局所再発の強い予測因子

<乳癌の予防、検診、治療における発展ー2014年乳癌シンポジウム主要研究ハイライト>
(折畳記事)

*この要約には抄録にはない最新データが記載されています

専門家の見解:
「腫瘍径は大きいが転移をしていない乳癌の女性に対して、しばしば術前化学療法が行われる。この試験結果は、腫瘍のステージと術前化学療法に対する病理学的な反応性を再発の予測因子として用いることができるという新たな情報を提供するものであり、医師や患者が手術後の治療を選択する上で新たな情報を提供する」と乳癌シンポジウムのニュースプランニングチームのメンバーであるAmy Early医学博士は述べている。

大規模な12試験のデータを分析した結果では、術前化学療法への腫瘍の病理学的反応性と腫瘍タイプは局所乳癌再発(局所とは、乳房内または腋窩リンパ節、胸部など乳房周囲での腫瘍の再発のこと)の強い予測因子である。

実際、研究者らによれば、これら2つの予測因子は現在の日常診療で用いられている診断時の腫瘍のステージよりも局所乳癌の再発リスクを評価するうえでより有益な情報を提供することをこの試験は示している。

この試験はこの種の試験の中では、今までで最も大規模な試験である。

術前化学療法および術後化学療法(ネオアジュバント療法およびアジュバント療法ともいう)は、生存期間においては同等の利益をもたらすが、術後補助療法を行う女性の方が一般的には多い。術前に化学療法を受ける重要な利点は、乳房内や腋窩リンパ節の腫瘍の縮小および消失が可能になることであり、乳房切除、リンパ節切除や術後化学療法の必要性を低減できる可能性がある。

「術前化学療法を受けることは、乳癌治療のよい選択肢であり将来的な他部位への再発を抑制するだけでなく、局所再発のリスクにおいても重要な情報を提供する。このことは、放射線療法を追加すべき再発に対する高リスクな患者と放射線療法は不要な低リスク患者を見分けることもできる可能性がある」とフロリダ州オーランドのUFヘルスケアがんセンターの総合乳腺プログラムの代表兼中央フロリダ大学外科の教授であるEleftherios Mamounas医学博士は述べている。

この試験では、研究者らは、欧米で実施した臨床試験で術前化学療法を施行したステージI~IIIの乳癌女性11,995人において、局所再発率を検討した。フォローアップ期間の中央値5.4年では、全局所再発率は8.3%であった。

予測因子としての腫瘍の病理学的反応性

手術時、術前化学療法に対して病理学的完全奏効(pCR、つまり、乳房内、腋窩リンパ節での腫瘍の消失)が得られなかった女性は病理学的寛解が得られた女性よりも局所再発(LRR)のリスクが増加する。病理学的完全奏効が得られた女性に比較して、乳房内に腫瘍が残存しているが腋窩リンパ節に腫瘍細胞がない場合には、1.6倍高い局所再発リスクであり、腋窩リンパ節に腫瘍細胞がある場合は2.8倍高い局所再発リスクである。乳房切除術や乳房温存療法(腫瘤摘出術)+放射線治療施行後の局所再発において病理学的完全奏効が影響することは明らかである。

予測因子としての腫瘍サブタイプ

局所再発率は、腫瘍サブタイプによっても異なる。ホルモンレセプター(HR)陽性/HER2-陰性でグレード1/2では、5年後の局所再発率は4.2%であったのに対し、HR陽性/HER2-陰性のグレード3では9.2%、トリプルネガティブの場合は12.2%、HR陽性/HER2-陽性では9.7%、HR陰性/HER2-陽性では14.8%であった。

また、研究者らは、たとえ診断時にかなり進行したステージであったとしても、病理学的寛解や腫瘍タイプを考慮すれば、必ずしも局所再発率には悪い影響がないことを突き止めた。

「これらの考察に基づいて新しいガイドラインの策定をするにはさらなる研究が必要であるものの、今回の研究結果は、医師や患者が、術前化学療法後の最善な局所治療を決定するうえで付加的な情報を与えることができる」とMamounas博士は述べている。

この研究はCTNeoBCグループの助成を受け実施された。

演題全文参照。

翻訳担当者 滝坂 美咲

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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