閉経後乳癌リスクは定期的な運動開始後に短期間で低下する

定期的な運動を止めると有益性はすぐに失われる

週4時間以上のウォーキングかそれと同等の定期的な運動を過去4年間に行ってきた閉経後女性は、4年間にそれより少ない運動を行った女性に比べて、浸潤性乳癌に罹るリスクが低くなるというデータが、米国癌学会(AACR)の学会誌であるCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌で発表された。

「週12MET-h(metabolic equivalent task-hours)とは、週4時間のウォーキングか週2時間のサイクリングあるいは他のスポーツを行うことに相当し、世界癌研究基金が推奨する1日30分以上のウォーキングと一致しています」と語るのはフランスのVillejuifにあるInstitut Gustave Roussyの疫学と公衆衛生の研究所のAgnes Fournier博士である。「つまり、激しい運動、またはかなり頻繁に運動を行う必要はなく、1日30分のウォーキングでも有益であることを、私たちの研究は示しているのです」。

4年にわたって各週12MET-h以上の運動を行った閉経後女性は、それより少ない運動しか行っていない女性に比べて、浸潤性乳癌のリスクが10%低下した。同レベルの運動を5~9年前には行っていたが、最終データ集計前の4年間に、それより少ない運動しか行っていなかった場合は、浸潤性乳癌のリスクは低下しなかった。

「運動は、月経停止後の女性の乳癌リスクを低下させると考えられます」とFournier氏は話す。「ですが、定期的な運動が開始された後どのくらいでこの関連性がみられるようになるのか、あるいは定期的な運動を休止した後どのくらいの期間までその関連性が維持されるのかはっきりしていませんでした」。

「わたしたちの研究はこの疑問に答えます」とFournier氏は続ける。「レクリエーション運動は、中強度の運動であっても、乳癌リスクにおいて短期間に影響があると思われることをわたしたちは明らかにしました。ですが、わたしたちが明らかにした、運動に関連している乳癌リスクの低下は、運動を止めると弱まります。結果として、運動をしている閉経後女性は、運動を続けることを薦められるべきであり、運動をしていない女性は運動を始めることを考えるべきなのです。それは乳癌のリスクは短期間に低下する可能性があるからです」。

Fournier氏らは、 欧州の癌と栄養に関する前向き試験(EPIC)の一部で、フランスで行われたE3N試験に登録された59,308人の閉経後女性を対象として、2年に1度行われたアンケート調査から得られたデータを解析した。追跡調査の平均期間は8.5年であり、その期間内で、初期の浸潤性乳癌の診断を受けた女性は2,155人だった。

自己申告されたレクリエーション運動の合計量は、MET-h/週で計算された。12MET-h/週以上のレクリエーション運動がもたらす乳癌リスク低下作用は、肥満度指数、体重の増加、胴囲、5~9年前の運動の強度とは無関係であった。

本研究は、Institut National du Cancer、Fondation de France、およびthe Institut de Recherche en Sante Publiqueから支援を受けた。E3Nコホート試験は、Institut National du Cancer、the Mutuelle Generale de l’Education Nationale、the Institut de Cancerologie Gustave Roussyそしてthe Institut National de la Sante et de la Recherche Medicaleから資金援助を受けた。Fournier 氏は、利益相反はないことを宣言している。

翻訳担当者 滝川俊和

監修 大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)

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