乳房に塗布するタモキシフェンゲルは経口投与よりも副作用が少なく効果的

乳房に塗布するタモキシフェンゲルは経口投与よりも副作用が少なく効果的

タモキシフェンの分解産物4-OHT(4-ヒドロキシタモキシフェン)のゲル製剤を非浸潤性乳管癌(DCIS)患者の乳房に塗布したところ、タモキシフェン経口投与と比較して、癌細胞増殖の阻害に同等の効果が得られ、副作用の発現率は低下したとの臨床試験結果が米国癌学会(AACR)の学術誌 Clinical Cancer Research誌で発表された。

「今回の試験でわれわれは、ゲル化4-OHTを皮膚に塗布することにより、薬剤濃度が乳房で高くなる一方循環血中では低くなることを明らかにしました。これにより、薬剤の効果を維持しながらも、副作用を最小限に抑えることができるのでしょう」とイリノイ州シカゴのノースウェスタン大学フェインバーグ医学部外科教授Seema A. Khan医師は語った。

「経口剤であるタモキシフェンは、乳癌リスクの高い一部の女性に、乳癌の予防薬として使用されています。今回のデータから、タモキシフェン由来のゲル化剤塗布が経口投与に取って代わることができると考えられ、さらに多くの女性で予防療法を促進できるようになるでしょう」と同氏は付け加えた。

Khanらは、ランダム化二重盲検プラセボ対照第2相臨床試験を実施し、ゲル化4-OHTの乳房への塗布とタモキシフェンの経口投与の有効性を比較した。6~10週間のゲル塗布後、細胞増殖マーカーであるKi-67の乳房組織中における低下は、同期間タモキシフェンを経口投与した場合と同等であった。タモキシフェンの経口投与と比較して、ゲル塗布の場合の薬剤の血中濃度ははるかに低く、タモキシフェンの経口投与で多く認められるホルモン関連の副作用や血栓の発現が減少した。

研究者らは、エストロゲン受容体陽性非浸潤性乳管癌と診断された女性(45~86歳)26人をゲル化4-OHT塗布群またはタモキシフェン経口投与群のいずれかにランダムに割り付けた。患者は全員、治療開始時に血液試料を採取され、乳癌予防試験における8症状の評価尺度(BESS)の質問票に記入した。手術前の6~10週間、ゲル塗布群の患者は毎朝ゲル1mlずつを両乳房の皮膚に塗布し、タモキシフェン経口投与群の患者はタモキシフェン20 mgのカプセルを毎朝服用した。

ゲル1 mlには4-OHTが2 mg含まれた。

試験終了時、2回目の血液試料を患者全員から採取した。また試験開始から15日目、試験終了時、術後の来院時にBESS質問票に記入した。

手術中に採取した乳房組織中の4-OHT量は、ゲル塗布群とタモキシフェン経口投与群で同等であったが(それぞれ5.8 ng/gおよび5.4 ng/g)、4-OHTの血中濃度はゲル塗布群でタモキシフェン経口投与群の5.5分の1であった(それぞれ0.2 ng/mlおよび1.1 ng/ml)ことが明らかになった。

ゲル塗布患者における血中4-OHT濃度の著しい低下は血液凝固因子の減少と相関していた。

「タモキシフェンは肝臓により分解されて4-OHTなどの活性成分になる必要があります。この過程で、血栓を引き起こすタンパク質の活性化といった有害な副作用も発生する可能性があります。ゲル化4-OHTを乳房の皮膚に直接塗布した場合、肝臓での代謝はありませんから血栓のリスク増大といった有害な影響も消失するはずです」とKhan医師は説明した。

しかし、BESS質問票に基づけば、ゲル塗布群の患者において、膣および消化管症状、ほてりや発汗に、タモキシフェン経口投与群の患者より有意な改善はみられなかった。

「薬剤の有効性や安全性の改善に関する研究は急速に進展していますが最終的には国民の皆さんのサポートがなければ進歩はあり得ません」とKhan医師は語った。「今回の試験に参加してくださった女性に感謝したいと思います。また私としても国民の皆さんに、状況が合えば研究試験参加を検討してくださるよう、また政府に対して生物医学研究への資金支援が得られるよう働きかけています」。

この試験は米国国立衛生研究所(NIH)およびBHR Pharma LLC.より資金援助を受けている。Khan医師は利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 緒方登志文

監修 金田澄子(薬学)

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