比較的若い閉経後早期乳がんにも術後放射線は省略可

比較的若い閉経後早期乳がんにも術後放射線は省略可

米国がん学会(AACR) サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)

5年間の追跡調査後の結果で、長期的研究が必要と判断された

ステージIのホルモン受容体(HR)陽性乳がんで、一般的な遺伝子検査のスコアが低く、術後放射線治療を選択しなかった50歳から69歳の閉経後患者のほぼ全員が、術後5年後に再発を認めなかった。このIDEA臨床試験結果は、2023年12月5日から9日まで開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

この結果は同時にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。

ステージIのHR陽性乳がんと診断された患者は、一般的に乳房温存手術を受けた後、がん再発リスクを下げるために術後放射線治療とホルモン療法を受ける、とReshma Jagsi医学博士は説明する。Jagsi氏はエモリー大学医学部「the Lawrence W. Davis教授職」、放射線腫瘍学主任であり、エモリー大学ウィンシップがん研究所の研究者である。

Jagsi氏によれば、最近の研究では、術後放射線治療を受けなかった65歳以上の患者の再発リスクは低かったことから、高齢の患者は乳房温存手術後に放射線治療を安全に省略できる可能性が示唆されていた。しかし、比較的若い患者が術後放射線治療を受けないことが安全であるかどうかは不明であった。

「放射線治療の技術は劇的に向上し、以前よりはるかに効率的で忍容性も向上していますが、患者は治療法を選択できることを歓迎します」とJagsi氏は指摘した。

比較的若い閉経後の早期乳がん患者において放射線治療を省略することが可能かどうかを検討するため、Jagsi氏らはIDEA臨床試験を実施し、ステージI、HR陽性、HER2陰性乳がんの50〜69歳の患者を登録した。Oncotype DX再発スコアを用いて、腫瘍の遺伝子プロファイルに基づいて各患者の再発リスクを決定した。再発リスクが低い患者は、標準治療である術後補助ホルモン療法を最低5年間受ければ乳房温存手術後の放射線治療を省略できることとした。

本試験に登録された200人の患者(50~59歳60人、60~69歳140人)が放射線治療を省略できると判定された。186人の評価可能な患者のうち、100%が術後5年生存しており、99%(184人)はこの時点で乳がんがなかった。

「これらの知見から、乳房温存手術後に放射線治療を受けなかった比較的若い閉経後のステージI乳がん患者が5年以内に再発するリスクが極めて低いことが示唆されます」と、Jagsi氏は述べる。「しかし、5年という期間はこの患者集団にとっては早い経過点であり、この年齢層の女性にこの選択肢を安全に提供できるかどうかを判断するためには、この研究をはじめとする長期追跡調査が不可欠です。

今回のような研究は、がん診断が患者から奪い去りかねない主体性を患者が取り戻せるよう複数の治療選択肢を明示すること、また、すべての患者が十分な情報を得た上で自分にとって適切な決断ができるようにすることで患者の経験を改善する方法を明らかにするもので、重要な研究です」とJagsi氏は述べた。

この研究の限界は、追跡期間が短いこととサンプル数が少ないことである。

本研究の情報開示については、原文を参照のこと。

  • 監訳 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2023/12/07

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