ステージ4の乳癌には乳房切除術が不要である可能性

キャンサーコンサルタンツ

乳房切除術は、ステージ4の乳癌患者の多くで不要であり、実際に癌の広がりを促進する可能性さえあるとの試験結果が2013年サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された。

乳房切除術(乳房全摘出)は、局所治療であり、長い間、ステージ4の(進行)乳癌の標準治療とされてきた。しかし、乳房切除術は全生存期間の延長にはならず、日常的に実施すべきではないと考える研究者もいる。

インドの研究者らは、転移性乳癌患者350人を対象とした試験を実施した。アントラサイクリンをベースとした化学療法を6サイクル実施した後に客観的な腫瘍縮小効果が認められた女性患者全員を転移部位、転移数、ホルモン受容体の状態によって層別化した。局所治療(LRT)群または非局所治療(No-LRT)群のいずれかに患者を無作為に割り付けた。局所治療(LRT)には、乳房切除術、腋窩リンパ節全郭清、および放射線療法が含まれる。患者に癌の増悪が認められた場合には、適切な全身治療を施行した。

追跡調査中央値17カ月後の全生存期間の中央値は、外科的切除を施行していない群で20.5カ月、外科的切除を施行した群では18.8カ月であった。2年全生存率は、外科的切除を施行していない群で43.3%、外科的切除を施行した群では40.8%であった。年齢、エストロゲン受容体の状態、受容体の状態、転移部位、転移病変数で調整した後に、両群間の全生存期間に有意な差は認められなかった。

興味深いことに、局所治療は、局所領域無増悪生存期間の延長を伴うが、無遠隔転移生存期間は短くなっており、この結果から、研究者らは、原発腫瘍の切除によって癌が広がる可能性があるという仮説を導いている。実際に、原発腫瘍の切除によって遠隔腫瘍の増殖を促す成長因子が放出されるようであるとした数十年前の動物実験を引用していた。

局所治療は、一次治療の化学療法に奏効した転移性乳癌患者の生存期間の延長をもたらさないと研究者らは結論づけた。外科的切除は対症療法のひとつの選択肢として残しておくべきであることを示唆している。

参考文献
Badwe R, Parmar V, Hawaldar R, et al: Surgical removal of primary tumor and axillary lymph nodes in women metastatic breast cancer at first presentation: A randomized controlled trial. 2013 San Antonio Breast Cancer Symposium. Abstract S2-02. Presented December 11, 2013.


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翻訳担当者 清水美緒子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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