新規分子標的薬(BMN673)は、乳癌感受性遺伝子が関連する癌の治療に有望

新規分子標的薬(BMN673)は、乳癌感受性遺伝子が関連する癌の治療に有望

乳癌感受性遺伝子(BRCA)と関連した進行乳癌および卵巣癌患者で既に濃厚な薬物治療を受けている場合、新規のポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるBMN673が早期に奏効するという第1相臨床試験の結果が、10月19~23日に開催された国際分子標的・癌治療学会で発表された。

ヒト細胞のDNAが損傷されると、PARP1とPARP2の2つのタンパク質がBRCAタンパクの欠失に関連するDNA損傷を修復するタンパク質を動員する。BRCA遺伝子に変異があると、損傷したDNAを修復できないことが多く、その結果乳癌や卵巣癌などの特定の癌を発症するリスクが高くなる。従って、PARPを阻害すると損傷したDNAの修復が抑制され、細胞は死に至る。種々の条件下で数種類のPARP阻害剤について臨床試験が実施されているが、未だ承認されたものはない。

「BMN673はもっとも強力な臨床試験中のPARP阻害剤であり、薬剤学的特性も最適化されています。経口投与で吸収が良好で、単独で強力な抗腫瘍活性を有し、半減期も長く、1日1回投与とすることが可能です」。UCLA医学部ジョンソン総合がんセンター助教のZev A. Wainberg医師はこう述べた。「現在までの臨床データは有望なもので、他のPARP阻害剤の臨床試験結果と比較してもさらに優れたものです。BRCA関連乳癌および卵巣癌では、低用量、1日1回の経口投与により、高い奏効率を示し目標を達成しています」

「今回の第1相臨床試験結果から、適格基準に適合したBRCA関連癌患者であれば、比較的副作用が少なく一定期間の病勢コントロールが得られる可能性が高いと言えます。しかし、現在利用可能な治療法と比べて無増悪生存期間や全生存期間の延長をいうためにはランダム化試験が必要です」

Wainberg氏らはBMN673の安全性および有効性を評価するため、用量を漸増し、患者数を増やす2段階からなる第1相臨床試験を実施した。これまでに用量漸増フェーズに39人、拡大フェーズに41人の患者を登録している。患者の年齢は18~82歳で、少なくとも1種類から最大13種までの治療歴がある。

50人の患者(乳癌18人、卵巣癌28人、膵癌3人、および前立腺癌1人)の癌にBRCA変異があった。Wainberg氏は現在までのところ、BRCA変異を有する癌患者のうち、卵巣癌患者の44%と乳癌患者の44%で奏効が得られたと報告した。全体で卵巣癌患者の82%と乳癌患者の72%に臨床的有用性が認められた(卵巣癌患者では画像診断もしくは腫瘍マーカーCA125値の一方もしくは両方で、乳癌患者では画像診断により評価した)。

今後の臨床試験における推奨用量となった投与量1mgの投与では、BRCA変異を有する乳癌患者の50%で奏効がみられ、86%で臨床的有用性が得られた。膵癌患者3人のうち2人は病勢安定(SD)となった。

疲労、貧血、好中球減少、血小板減少などグレード3の有害事象があった患者は20%未満で、1人の患者でグレード4の毒性が見られた。

Wainberg氏によれば、乳癌患者で奏効率および臨床的有用性が高かったことから、最近BRCA変異を有する転移性乳癌の第3相臨床試験を開始したという。

今回の第1相臨床試験に参加したBRCA非関連癌患者では、現在も評価が可能な小細胞肺癌(SCLC)患者7人のうち1人が奏効している。この患者は癌が広範囲に転移しているが部分奏効を継続している、とWainberg氏は説明している。「SCLC患者ではっきりと部分奏効したということで、BRCA関連癌以外にもBMN673治療が適応となる期待が出てきました」

本研究はBioMarin Pharmaceutical社の資金提供を受けている。Wainberg氏に開示すべき利益相反はない。

2013年国際分子標的・癌治療学会は米国癌学会(AACR)、米国国立癌研究所(NCI)、欧州癌研究治療機関(EORTC)が共同開催した。

翻訳担当者 橋本仁

監修 辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター/株式会社メディア総合研究所)

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