PI3K標的治療は、乳癌患者における抗HER2治療への抵抗性獲得を遅らせる

• PI3K阻害剤を早期に使用すると、治療抵抗性の出現を防ぐまたは遅らせる可能性がある
• 抗HER2治療抵抗性の癌細胞はサバイビンレベルが高かった。
• 新たに特定されたバイオマーカーは抗HER2治療抵抗性の予測に役立つ可能性がある

フィラデルフィア – 抗HER2治療を受けているHER2陽性乳癌患者では、治療にホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害剤を加えることにより、治療抵抗性を防ぐまたは遅らせる可能性がある。

米国癌学会のCancer Research誌で発表されたデータにより、抗HER2抗体であるトラスツズマブがHER2を阻害しなくなり、PI3Kシグナル伝達経路の活性化を阻止できなくなると、治療抵抗性を招く可能性があることが明らかになった。したがって、HER2およびPI3Kを同時に阻害することにより、乳癌女性における抗HER2治療の期間を延長できるかもしれない。

Carlos L. Arteaga医師(テネシー州ナッシュビルのバンダービルト・イングラムがんセンターの乳癌プログラムのディレクター)は次のように述べた。「HER2陽性乳癌は乳癌のサブタイプで、これに対してHER2を標的とする抗体トラスツズマブなど、次々と有効な治療法が確立されています。しかし残念なことに、乳癌腫瘍の多くがこの治療への抵抗性を獲得するのです」。

Arteaga氏らは、PI3K経路を介する異常なシグナル伝達がトラスツズマブ耐性の機序になる可能性を調べた。様々な様式でPI3K経路の活性化が異常になっているトラスツズマブ耐性の乳癌モデルを用い、PI3K阻害剤とトラスツズマブの併用またはPI3K阻害剤単独で細胞を処理した。

PI3K阻害により癌細胞の増殖能は低下し、トラスツズマブ耐性細胞の死を誘導した。また、PI3K阻害剤単独と比較し、トラスツズマブとPI3K阻害剤の併用は、異種移植片においてトラスツズマブ耐性のHER2陽性細胞に対して優れた抗腫瘍効果をもたらした。

研究者らは薬剤併用によりトラスツズマブ耐性が抑制される機序を特定するための分析を行った。

Arteaga氏は次のように述べた。「PI3K経路が活性化したトラスツズマブ耐性細胞にはサバイビンと呼ばれる抗細胞死タンパク質が高レベルで存在することが明らかになりました。これは、サバイビンのレベルを低下させることができれば、これらの細胞の治療感受性が高まることを示唆しています」。

また、HER2陽性乳癌腫瘍における治療前のサバイビンレベルを測定し、治療前の高いサバイビン蛋白質レベルが治療反応不良と相関することがわかった。


「腫瘍のサバイビンレベルを測定し、治療をしてもサバイビンが高いままかまたは減少しない場合、腫瘍が抗HER2治療抵抗性であることを予測し、代替療法を探すことができます」と、Arteaga氏は述べた。


Arteaga氏らは、乳癌において他のHER2薬との併用でのPI3K阻害剤の試験(すでに早期臨床開発を開始)を継続する予定である。また、サバイビンのレベルによって併用療法の恩恵を受ける腫瘍を予測できるかどうかを判断するために、HER2過剰発現乳癌腫瘍におけるサバイビンレベルを測定する計画を立てている。

翻訳担当者 渉里幸樹

監修 金田澄子(薬学)

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