乳癌予防における緑茶抽出成分の作用機序を同定

• ポリフェノンEは腫瘍増殖因子を標的とする可能性がある。
• 研究者は、緑茶の摂取を推奨するには時期尚早としている。

 カリフォルニア州アナハイム発-緑茶抽出成分であるポリフェノンEを経口摂取することで、腫瘍細胞の増殖、遊走および浸潤を促進する血管内皮増殖因子および肝細胞増殖因子を阻害すると考えられる。

 研究者らは、ホルモン受容体陰性女性乳癌患者40人を対象とした、ポリフェノンEのプラセボ対照ランダム化第1b相臨床試験の副次的解析で、この事実を発見した。ニューヨーク州ニューヨークのコロンビア大学メディカルセンターの医療疫学助教であるKatherine D. Crew医師は、2012年10月16日~19日に当地で開催された第11回AACR癌予防研究の最前線国際年次総会においてデータを発表した。

「緑茶の主成分のひとつである没食子酸エピガロカテキン(EGCG)とその抗癌作用機序の種々の可能性に関して、多くの前臨床試験で調査されました。しかし、同様の試験を患者で実施するのは非常に困難です。」とCrew氏は述べた。「この試験は、緑茶が乳癌を予防するかどうか断言するには、規模が小さすぎます。しかし、抗腫瘍効果の作用機序を理解するという意味では、前進だと思います。」

昨年の癌予防研究の最前線国際会議で発表された主たる解析では、女性患者40人を、ポリフェノンE 400mg群、600mg群、800mg群またはプラセボ投与群にランダムに割り付け、各群とも1日2回、6カ月間投与された。患者の血液および尿検体は、投与開始前、2カ月後、4カ月後および6カ月後に採取された。

今回の副次的解析で、Crew氏らは、緑茶抽出成分の作用機序に関与する可能性のある炎症性タンパク、増殖因子および脂質関連のバイオマーカーなどの生物学的評価項目を検討するため、その血液および尿検体を使用した。バイオマーカーのデータは、患者40人中34人のデータが解析に利用できた。

ポリフェノンE投与群の患者では、プラセボ投与群と比較してポリフェノンE代謝物が平均で10倍増加していた。さらに試験開始2カ月後において、ポリフェノンE投与群ではプラセボ投与群と比較して肝細胞増殖因子濃度が有意に減少していた。しかしながら、4カ月および6カ月経過後では、統計学的有意差はもはや消失していた。

研究者らはまた、ポリフェノンE投与群における血清総コレステロール値および血管内皮増殖因子の減少傾向を認めた。

Crew氏は、乳癌予防の目的で緑茶抽出成分の摂取を推奨するには時期尚早としている。現在、ハイリスクの女性に対する乳癌の一次予防を目的とした緑茶抽出成分の経口摂取に関して、複数の研究が進行中である。

翻訳担当者 徳井陽子

監修 須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制の画像

【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制

ASCOの見解(引用)「Destiny-Breast09試験で得た知見は、HER-2陽性転移性乳がんに対する新たな一次標準治療法に相当するものです。治療期間が年単位で評価できる...
【ASCO2025】サシツズマブ ゴビテカン、一部のPD-L1陽性乳がん(TNBC)でがんの進行なく延命効果の画像

【ASCO2025】サシツズマブ ゴビテカン、一部のPD-L1陽性乳がん(TNBC)でがんの進行なく延命効果

ASCOの見解(引用)「サシツズマブ ゴビテカンを転移性トリプルネガティブ乳癌患者の初回治療としてペムブロリズマブと併用した場合、化学療法+ペムブロリズマブと比較して、優れた病...
【ASCO25】ダナファーバー①乳がん、大腸がん標準治療の再定義、KRASG12C肺がん、脳リンパ腫、前立腺がんの画像

【ASCO25】ダナファーバー①乳がん、大腸がん標準治療の再定義、KRASG12C肺がん、脳リンパ腫、前立腺がん

以下の研究結果は、2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。• ダナファーバーの研究は、希少がんや悪性腫瘍に対する有望な治療法もサポートしている。研究...
【ASCO2025】ESR1変異進行乳がん、ベプデゲストラントが無増悪生存期間を延長する可能性の画像

【ASCO2025】ESR1変異進行乳がん、ベプデゲストラントが無増悪生存期間を延長する可能性

ASCOの見解(引用)「ホルモン感受性を有しESR1変異が認められる転移乳がん患者さんにおいて、ベプデゲストラント[vepdegestrant]は、フルベストラント(商品名:フ...