ASCO、高齢転移乳がんへの経口CDK4/6阻害薬戦略の研究で1100万ドルを獲得

ASCO、高齢転移乳がんへの経口CDK4/6阻害薬戦略の研究で1100万ドルを獲得

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、高齢の転移性乳がんを対象とした経口CDK4/6阻害薬の投与戦略の研究について、患者中心アウトカム研究所(PCORI)から1,100万ドルの研究資金を授与された。この研究は、この疾患の治療における非常に重大なエビデンスギャップ、すなわち用量の最適化と個別化の差を解消することを目的としている。乳がんは65歳以上に罹患者が多いが、この年齢層、特に75歳以上の高齢者はCDK4/6阻害薬の臨床試験にほとんど組み込まれていない。

「PCORIが私たちの研究の価値を認めてくださったこと、高齢乳がん患者の忍容性の改善や治療継続期間の延長といった転帰の改善に役立つこの賞を授与してくださったことに、大変感謝しています。この臨床試験は、がん患者への用量の最適化を改善するためのASCOのこれまでの取り組みを基礎とするものであり、その結果は、実際の診療現場における脆弱な患者集団に対するがん治療と転帰の進展に役立つものです」と、ASCOの最高医学責任者兼副会長であるJulie R. Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べている。

CDK4/6阻害薬の用量は化学療法と同様に、薬剤開発の初期段階で確認された最大耐量で承認された。CDK4/6阻害薬を含む標的治療薬は、強力な抗がん作用を求めるのに必ずしも高用量である必要はなく、低用量でも高い効果が期待できる。

高齢の転移性乳がん患者は、FDAが承認したCDK4/6阻害薬の治療用量の全量を服用し続けられないことが多く、忍容性が低いために頻繁な減量、治療の中断、早期の治療中止を余儀なくされる。その結果、治療に耐えられる患者に比べて罹患率や死亡率が高くなる。臨床の現場では、医師は特に高齢者や虚弱な患者には低用量から投与を開始する。忍容性への懸念からCDK4/6阻害薬を全く処方されない患者もいる。臨床試験に参加する高齢者の人数が十分でないことが多いため、この集団における最適な治療戦略を導くデータが不足している。

ASCOのこの研究では、ホルモン受容体陽性乳がん患者の治療としてホルモン療法と併用するCDK4/6阻害薬、特にパルボシクリブ(販売名:イブランス)とribociclib[リボシクリブ]の投与戦略について検討する。「高齢転移性乳がん患者を対象とした経口投与戦略の比較により忍容性を最大化し投与中止を減少させるCDK4/6阻害薬投与知見(CDK)試験 」では、全量での投与を開始し副作用があれば減量する方法と、初回投与は低用量で開始し忍容性が認められれば増量する方法とを比較する。この試験では、参加者がCDK4/6阻害薬による治療をどのくらいの期間継続するかを測定する。治療を長く続けることで、抗がん効果が有意に長期化する可能性が高まる。

この試験は、幅広い適格性基準や、実用的で患者中心の試験デザインを用いて、患者と臨床医のニーズを満たすように設計された。この試験は主に、TAPUR(Targeted Agent and Profiling Utilization Registry)ネットワークを通じて既にASCOと共同研究を行っている施設で実施する。これらの施設には、多様な人種・民族や高齢者を含む転移性がん患者を試験に登録してきた実績がある。

「このプロジェクトは、その科学的メリットや、患者およびその他の医療関係者に参加してもらう取り組みだけでなく、実際の診療現場での実施についても評価され、PCORIの助成対象に選ばれました。このプロジェクトが転移性乳がん治療に関する重要な疑問に答え、極めて重大なエビデンスギャップを埋める可能性があります。この研究の進捗を追跡し、ASCOと協力して結果を共有できることを楽しみにしています」と、PCORI事務局長のNakela L. Cook医師(MPH)は述べた。

CDK試験は、この試験の試験責任者であるGralow博士と、コロンビア大学Herbert Irving総合がんセンターおよびニューヨーク・プレスビテリアン病院のDawn L. Hershman医師(MS、FASCO)、ダナファーバーがん研究所のErica L. Mayer医師(MPH、FASCO)、および患者中心投与イニシアチブの研究患者支持者であるJanice Cowden氏が主導する。この研究は、患者、介護者およびその他の関係者が研究者らと共に評価を行うという非常に競争的な審査プロセスを経て選ばれた。さまざまな患者にとって有用であり、日常的な医療現場で適用しやすい成果を生み出す研究を支援することを目的としたPCORIプログラムを通じ、この研究が資金助成の対象として選ばれた。

ASCOの受賞は、PCORIスタッフによるビジネスおよびプログラムの審査完了と正式な受賞契約書の発行を待って承認された。

PCORIは、2010年に米連邦議会によって認可された独立した非営利団体である。その使命は、患者やその介護者、臨床医がより良い情報に基づく医療上の意思決定を行うために必要な、エビデンスに基づく情報を提供する研究に資金を提供することである。PCORIの資金提供に関する詳細は、www.pcori.orgを参照のこと。

  • 監訳 小坂泰二郎(乳腺外科/JA長野厚生連 佐久総合病院 佐久医療センター)
  • 翻訳担当者 瀧井希純
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  • 原文掲載日 2023/07/18

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