2012/08/07号◆FDA情報「転移性大腸癌の新薬を承認」「一部の乳癌治療にエベロリムスを承認」「進行性多発性骨髄腫にカーフィルゾミブを承認」

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NCI Cancer Bulletin2012年8月7日号(Volume 9 / Number 16)

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◇◆◇ FDA情報 ◇◆◇

・転移性大腸癌の新薬を承認
・一部の乳癌治療にエベロリムスを承認
・進行性多発性骨髄腫にカーフィルゾミブを承認

転移性大腸癌の新薬を承認

米国食品医薬品局(FDA)は、一部の成人大腸癌患者の治療に、FOLFIRI(ロイコボリン+フルオロウラシル+イリノテカン)化学療法との併用でziv-aflibercept(アフリベルセプト:Zaltrap)を承認した

本剤は血管新生抑制剤であり、腫瘍血管の発生を防ぐ働きがあると考えられている。本剤はオキサリプラチンを含む化学療法後に腫瘍が抵抗性あるいは進行を示した転移性大腸癌患者を対象としている。

「この承認は、一般に用いられる化学療法FOLFIRIに、生物学的薬剤であるアフリベルセプトを加えることの有益性を示している」と、FDA医薬品評価センターのDr. Richard Pazdur氏は8月3日の会見で語っている。「FOLFIRIにアフリベルセプトを追加することで、奏効率の改善および腫瘍の進行と増大の遅延を伴った生存期間中央値の延長が認められた。」

アフリベルセプトは、オキザリプラチンベースの併用化学療法を受けている間に進行した転移性大腸癌患者1226人を対象にしたランダム化臨床試験にて評価された。手術後にオキザリプラチンベースの化学療法を完了して6カ月以内に再発を来たした患者、及びベバシズマブによる治療を受けた患者も対象にした。参加者は癌が進行するか、容認できない副作用が生じるまで治療を受けた。

VELOUR試験と呼ばれたこの試験における被験者の半分がアフリベルセプト+FOLFIRI併用群に、残りの半分がFOLFIRI+プラセボ群にランダムに割り付けられた。本試験はアフリベルセプトが全生存を改善するかどうかを評価するため計画された。平均生存期間は、アフリベルセプト投与を受けた患者は13.5カ月であったのに対し、プラセボ投与を受けた患者は12カ月であった。

アフリベルセプト投与を受けた患者は腫瘍反応も改善した。アフリベルセプト群患者では腫瘍が20%縮小し、プラセボ群では11%縮小した。

アフリベルセプトは無増悪生存期間も延長した。癌が進行することなく生存した期間の平均は、アフリベルセプト群患者で6.9カ月、プラセボ群患者で4.7カ月であった。

アフリベルセプトは、消化管出血および消化管穿孔含む重篤または致死的な出血の原因となり得ることを示した囲み警告付きで承認された。警告では、本剤が創傷治癒を損なう可能性があることも述べている。

アフリベルセプト+FOLFIRI群患者に最も多く見られた副作用は、白血球数の減少、下痢、口腔潰瘍、疲労、高血圧、尿タンパクの増加、体重減少、食欲減退、腹痛、頭痛などであった。

ある種の乳癌治療にエベロリムスを承認

FDAは、ホルモンレセプター陽性でHER2 陰性の進行性乳癌の一部の閉経後女性患者の治療に、エキセメスタン (アロマシン)との併用でエベロリムス(アフィニトール)を承認した

7月20日のFDAの発表によると、本治療はレトロゾール(フェマーラ)あるいはアナストロゾール(アリミデックス)での治療後に疾患が進行した女性を対象にしている。

エベロリムスは進行性腎細胞癌、進行性膵臓神経内分泌腫瘍あるいは上衣下巨細胞星状細胞腫と呼ばれる良性脳腫瘍患者に対する治療薬としても承認された。

この新たな承認は、エキセメスタン+プラセボ投与を受けた女性と比較して、エベロリムス+エキセメスタン投与を受けた女性では、疾患進行あるいは死亡までの期間中央値が、4.6カ月の延長した臨床試験に基づいている。

エベロリムスは、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質のシグナル伝達経路を阻害することによって細胞増殖または腫瘍血管の形成を妨げる。

乳癌に対しエベロリムス投与を受けている患者において最も多く見られる副作用は、口腔潰瘍、感染症、発疹、疲労、下痢、食欲減退などである。年齢65歳以上の患者は若い患者に比べ重篤な副作用を起こす可能性が高いため、FDAは注意深く観察するよう警告している。

進行性多発性骨髄腫にカーフィルゾミブを承認

FDAは、ボルテゾミブ(ベルケイド)やサリドマイドのように免疫系を調節する薬剤を含む、少なくとも2種類の治療後に疾患が進行した多発性骨髄腫患者を治療するためcarfilzomib (カーフィルゾミブ:Kyprolis)を承認した

カーフィルゾミブは、細胞タンパク質を分解するプロテアソームと呼ばれる酵素に結合して阻害する。この過程を阻害することが、細胞死を導き腫瘍の増殖を妨げる。

7月20日の承認は、過去に少なくとも2種類の治療を受けた多発性骨髄腫患者266人を対象に行った単一群試験において認められた奏効率に基づいている。カーフィルゾミブを投与されている患者の1人は癌消失(完全寛解)の徴候が見られ、他の60人には癌縮小(部分奏効)が認められ、全奏効率は22.9%であった。カーフィルゾミブに患者が反応を示した期間中央値は7.8カ月であった。

30%以上の患者にみられた副作用は、疲労、悪心、貧血、赤血球数または血小板数の減少、息切れ、下痢、発熱などが挙げられる。重篤な有害反応は45%の患者で報告された。最も頻繁に見られた有害反応は、肺炎、急性腎不全、発熱、うっ血性心不全であった。末梢神経障害のリスクはボルテゾミブのようにすでに市場に出ている同様の薬剤よりもカーフィルゾミブの方が少なかった。

カーフィルゾミブは、奏効率など、患者への有益性が予測できる代替エンドポイントにおいて薬効を示した臨床データに基づき承認するFDAの迅速承認プラグラムを通して承認された。製造元であるOnyx Pharmaceuticals社は、本剤の臨床上の有益性を確認する追加データを提出する必要がある。

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滝川俊和 訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科) 監修 
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原文掲載日 

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