糖尿病治療薬は閉経後の女性糖尿病患者の乳癌発症リスクを低下させる可能性がある

キャンサーコンサルタンツ

メトホルミンは糖尿病治療のために一般的に処方されている血糖降下薬である。Journal of Clinical Oncology誌速報版に発表された研究結果によると、メトホルミンは閉経後の女性糖尿病患者の浸潤性乳癌発症リスクを低下させる可能性がある。

乳癌は米国において最も多い癌である(皮膚癌を除く)。毎年およそ227,000人の女性が乳癌と診断され、40,000人近くが死亡している。

米国疾病管理予防センターによると米国ではおよそ2,580万人が糖尿病に罹患しており、そのうち95%がインスリン抵抗性を特徴とする2型糖尿病である。インスリンは体内のグルコース濃度(ブドウ糖)を制御するホルモンである。2型糖尿病はインスリンを分泌し、使う機能が低下する病気である。メトホルミンはインスリンの感受性を高め、2型糖尿病を治療する薬剤である。

メトホルミンが乳癌の発症リスクを低下させるという証拠がいくつかある。関連性を調べるため、研究者らは女性の健康イニシアティブの研究データを解析した。研究では3,401人の糖尿病患者を含む68,000人の閉経後の女性が11年8カ月(中央値)観察された。研究期間中3,273人の女性が浸潤性乳癌と診断された。この大規模研究には、乳癌のリスク因子、初期のマンモグラフィ画像、乳癌の診断、糖尿病の罹患歴などについての詳細情報が設定されていた。

データを分析した結果、研究者らはメトホルミンを服用している人は、服用していない人より浸潤性乳癌の発症リスクが25%低いことを発見した。この理由は明確ではないが、研究者らはメトホルミンが癌の発症に関わるmTOR 経路を阻害するためだと推測している。

メトホルミンを癌予防薬と考えるのは時期尚早であり、本研究結果によって診療が変わることはないであろう。しかしながら、今後もメトホルミンおよび癌発症リスクに与える同薬の影響について、さらに研究が進められるだろう。

参考文献:

Chlebowski RT, McTiernan A, Wactawski-Wende J, et al. Diabetes, metformin, and breast cancer in postmenopausal women. Journal of Clinical Oncology. Published early online June 11, 2012. doi: 10.1200/JCO.2011.39.7505


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翻訳担当者 芝原広子

監修 原 文堅(乳癌/四国がんセンター)

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