BRCA1/2遺伝子に変異がある女性にとっての予防的乳房切除の有効性が明らかに

BRCA1/2遺伝子に変異がある女性にとっての予防的乳房切除の有効性が明らかに

キャンサーコンサルタンツ
2010年5月

オランダの研究者らは、BRCA1/2に変異がある女性の乳癌予防には予防的乳房切除が非常に効果的であると報告している。この研究の詳細はAnnals of Surgery誌2010年5月号で発表された。[1]
BRCA1および BRCA2という二つの遺伝子の遺伝性変異が乳癌と卵巣癌発症の生涯リスクを大きく増大させることが明らかになっている。こうした遺伝子の変異は母方、父方のいずれからも遺伝する。乳癌発症の生涯リスクは、BRCA1変異がある人で47-66%、 BRCA2変異がある人で40-57%である。この数値を一般集団における乳癌発症の生涯リスク13%と比較検討している。M. D.アンダーソンがんセンターの研究者らは、BRCA変異がある女性が乳癌のリスクと心配を減らすためには予防的乳房切除が最善の道であると考える可能性は、他のハイリスクの女性より高いだろうとこれまでに報告した。

今回の研究に携わった研究者らは、BRCA1/2遺伝子変異があり、MRIを含む検診後に予防的乳房切除術を受けた254人の転帰について評価した。この研究の対象となったのは、これまで乳癌と診断されたことがなく、両側乳房切除を受けた147人および乳癌にかかり、対側乳房切除を受けた107人であった。後者の群ではほぼ4年間、癌のない状態であった。

  • 乳癌症状がなく両側乳房切除を受けた147人のうち、検診時、1人に潜在性の乳癌があった。
  • 乳癌症状がなく両側乳房切除を受けた6人(4%)の手術検体で、侵襲性乳癌が見つかった。
  • 乳癌症状があり対側乳房切除を受けた5人(4.3%)の手術検体で、侵襲性乳癌が見つかった。
  • 乳癌症状がなく両側乳房切除を受けた147人では、観察期間778人年の間、乳癌はみられなかった。
  • 対側乳房切除を受けた107人のうち、追跡観察期間580人年の間、1人に乳癌がみられた。

著者らは、BRCA1/2変異がある人の乳癌予防において予防的乳房切除術は非常に効果的であると結論づけた。両側乳房切除を受けた人には継続的検診の必要はないと示唆している。

コメント:このデータはBRCA1/2変異がある人が予防的乳房切除に関する決定をくだすのに役立つだろう。

参考文献:
[1] Kaas R, Verhoef S, Wesseling J, et al. Prophylactic mastectomy in BRCA1 and BRCA2 mutation carriers: very low risk for subsequent breast cancer. Annals of Surgery. 2010;251:488-492.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.

翻訳担当者 鈴木久美子

監修 原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果の画像

【AACR2025】 オラパリブ+ペムブロリズマブ併用は、分子マッチングによる臓器横断的試験で有望な結果

● オラパリブ(商品名:リムパーザ)とペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の併用は、複数のがん種、特にBRCA1/2遺伝子変異(乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんなどの発症リス...
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②の画像

【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ②

5月30日-6月3日イリノイ州シカゴおよびオンラインで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、がんのさまざまな部位にわたる幅広いテーマについて探究した44件の研究...
【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ①の画像

【ASCO2025】年次総会注目すべき追加研究・LBA ①

ASCOの見解(引用)5月30日-6月3日イリノイ州シカゴおよびオンラインで開催された2025年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会では、がんのさまざまな部位にわたる幅広いテー...
【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制の画像

【ASCO2025】トラスツズマブ デルクステカン+ペルツズマブ併用はHER2陽性進行乳がんの一部でがん増殖を抑制

ASCOの見解(引用)「Destiny-Breast09試験で得た知見は、HER-2陽性転移性乳がんに対する新たな一次標準治療法に相当するものです。治療期間が年単位で評価できる...