乳癌患者の骨折はタモキシフェンよりもフェマーラによる治療で頻度が高い

キャンサーコンサルタンツ
2009年10月

BIG I-98共同国際乳癌臨床試験団体に参加した研究者たちは、早期乳癌の術後補助療法でタモキシフェンと比較してフェマーラが骨折発生率の増加と関連していたと報告した。本研究の詳細は2009年9月9日号Annals of Oncologyに発表された。

乳癌の多くはホルモン受容体陽性である。これらの乳癌は血中の女性ホルモン-エストロゲンおよびプロゲステロン-によって成長が促進される。ホルモン受容体陽性の乳癌治療では、エストロゲンの作用を抑制もしくは遮断するホルモン療法を伴うことが多い。これらの療法にはフェマーラのようなアロマターゼ阻害剤やタモキシフェンが含まれる。タモキシフェンはエストロゲン受容体を遮断する作用があり、一方でアロマターゼ阻害剤はエストロゲン分泌を抑制する。

BIG(Breast International Group)1-98試験は、閉経後女性でホルモン受容体陽性の早期乳癌患者8,000人に対し、ランダム化第3相二重盲検試験を行ったものである。対象の女性は次の4グループに無作為に割り付けられた。

・タモキシフェンによる5年間治療
・フェマーラによる5年間治療
・フェマーラによる2年間治療の後にタモキシフェンに変更して3年間治療する
・タモキシフェンによる2年間治療の後にフェマーラに変更して3年間治療する

BIG 1-98試験データの以前の分析によれば、タモキシフェンと比べてフェマーラは特に遠隔部位の再発危険性を有意に低下させる。5年間のフェマーラ治療はフェマーラの治療後にタモキシフェンで治療する連続療法よりも優れていた。フェマーラの主な副作用は骨量の減少で、骨折を招くおそれがある。

今回の研究では、BIG 1-98試験における5年間のフェマーラ治療の影響を5年間のタモキシフェン治療と比較して数値化する目的で、女性約5,000人が対象となった。研究者たちによると、骨折発生率は、フェマーラ服用の女性で9.3%、タモキシフェン服用の女性で6.5%であり、手首の骨折が最も多かった。骨折のリスク要因として挙げられたのは、加齢、喫煙、治療開始時の骨粗しょう症、骨折の既往歴、過去のホルモン補充療法であった。

コメント:早期乳癌の女性は、骨粗しょう症および骨折というリスクと、フェマーラの高い再発予防効果とを比較検討すべきである。状況によっては、骨量の低下軽減のため、初め2年間はタモキシフェン、続いてフェマーラもしくは他のアロマターゼ阻害剤の治療が推奨される。

骨粗しょう症、または骨減少症の可能性のある女性がフェマーラを投与されている場合、骨量の低下予防のため、6ヶ月毎にゾメタによる治療を受けることができる。他の選択として、経口ビスフォスフォネートによる治療を受けることもできる。アムジェン社の新薬であるDenosumab(デノスマブ)もフェマーラによる骨量の減少を予防することが明らかになっているが、まだ市販には至っていない。(※2010年6月[url=https://www.cancerit.jp/xoops/modules/fda_files/index.php?page=article&storyid=116]FDA承認[/url])

参考文献:
[1] Rabaglio M, Sun Z, Price KN, et al. Bone fractures among postmenopausal patients with endocrine-responsive early breast cancer treated with 5 years of letrozole or tamoxifen in the BIG 1-98 trial. Annals of Oncology. 2009;20:1489-1408


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 矢島多希子

監修 辻村信一(獣医学/農学博士、メディカルライター)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望の画像

HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望

ジョンズホプキンス大学ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによる新たな研究によると、新規の3剤併用療法がHER2陰性進行乳がん患者において顕著な奏効を示した。この治療で...
英国、BRCA陽性の進行乳がんに初の標的薬タラゾパリブの画像

英国、BRCA陽性の進行乳がんに初の標的薬タラゾパリブ

キャンサーリサーチUKタラゾパリブ(販売名:ターゼナ(Talzenna))が、英国国立医療技術評価機構(NICE)による推奨を受け、国民保健サービス(NHS)がBRCA遺伝子変異による...
乳がん術後3年以降にマンモグラフィの頻度を減らせる可能性の画像

乳がん術後3年以降にマンモグラフィの頻度を減らせる可能性

米国がん学会(AACR)  サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)50歳以上で、初期乳がんの根治手術から3年経過後マンモグラフィを受ける頻度を段階的に減らした女性が、毎年マンモグ...
早期乳がんにリボシクリブとホルモン療法の併用は転帰を改善:SABCSの画像

早期乳がんにリボシクリブとホルモン療法の併用は転帰を改善:SABCS

MDアンダーソンがんセンターアブストラクト:GA03-03

Ribociclib[リボシクリブ](販売名:Kisqali[キスカリ])とホルモン療法の併用による標的治療は、再発リスクのあ...