HER2ワクチンは乳癌の再発率を低下させる

キャンサーコンサルタンツ
2006年12月

最近開催された2006年のサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)の結果によると、HER2/neu (E75)ワクチンは、HER2陽性乳癌の癌再発を防止するかもしれない。

初期乳癌患者、特に腋窩リンパ節陰性の乳癌の治癒率は高いものであるが、これらの患者の中にも癌の再発を経験し、最終的には癌のために死亡することもある。そのため、ハイリスク患者の再発リスクを減らすことは当然である。

抗原性ペプチドであるE75ペプチドはHER2/neuタンパクに由来する。免疫刺激タンパクには有望性があるため、研究者らは、E75ペプチドを利用してワクチンを作成し、GM-CSFと混ぜ合わせて、皮内投与した。

2006年のSABCSで示されたE75ワクチンを評価する結果は、2つの異なる試験結果を合わせたものであった。1つの試験は、安全性の研究として腋窩リンパ節陽性の乳癌患者90人が参加し、もう1つの試験には、投与量の最適化研究のために腋窩リンパ節陰性の乳癌患者81人が参加した。HLA-A2またはHLA-A3の患者はワクチン接種を1回受けたが、その他のHLA抗原の患者にはワクチン投与は行われず観察となった。患者は標準的な外科手術や手術と内科的治療を受け、ワクチン投与前には乳癌の再燃の確証は得られていなかった。

24ヶ月追跡調査した結果

ワクチン投与群

観察群

P値

再発率

8.3%

16%

<0.07

全生存率

99%

95%

<9.1

副作用は主に局所的で、多くはグレードI/II であった。

症例数が少ないため統計学的には有意ではないが、研究者らは、E75ワクチンはハイリスクの早期乳癌患者の再発を50%低下させるかもしれないと結論付けた。このワクチンのさらなる評価のために第三相臨床試験が正当化される。

参考文献:

Peoples G, Khoo S, Dehqanzada Z, et al. Combined Clinical Trial Results of a HER2/neu (E75) Vaccine for Prevention of Recurrence in High-Risk Breast Cancer Patients. Proceedings from the 2006 annual San Antonio Breast Cancer Symposium. Oral presentation December 14, 2006. Abstract #4.(2006年サンアントニオ乳癌シンポジウムからの議事録 2006年12月14日講演 抄録#4)


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved. These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein. Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc. 本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。 Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 Nogawa

監修 平 栄(放射線腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【ASCO2025】イナボリシブ併用療法で、進行乳がんの生存延長と化学療法の遅延が可能にの画像

【ASCO2025】イナボリシブ併用療法で、進行乳がんの生存延長と化学療法の遅延が可能に

ASCOの見解(引用)「INAVO120試験では、未治療でPIK3CA変異を有するホルモン受容体陽性転移乳がん患者さんの生存期間を有意に改善する分子標的治療レジメンの有効性が示...
イムルネストラント+アベマシクリブ併用が、CDK4/6阻害薬治療後の進行乳がんに有効の画像

イムルネストラント+アベマシクリブ併用が、CDK4/6阻害薬治療後の進行乳がんに有効

イムルネストラント[Imlunestrant]とCDK4/6阻害薬アベマシクリブ(販売名:ベージニオ)の併用は、CDK4/6阻害薬による治療後に病勢が進行したエストロゲン受容体(ER)陽性かつ...
若年層のがん罹患率増加の理由を追究の画像

若年層のがん罹患率増加の理由を追究

もしかしたら、ディズニーワールドにいた時にそれはすでにあったのかもしれない。冬の終わりの朝、ビジネススーツ姿のテディベアを前面にあしらったスウェット・パーカーとジーンズという服装でオフ...
転移予測にがん細胞の「くっつきやすさ」を評価ー乳がんDCISで研究の画像

転移予測にがん細胞の「くっつきやすさ」を評価ー乳がんDCISで研究

研究者らは、他の部位にまだがんが転移していない患者の治療方針について、腫瘍医がより良い判断を下すのに役立つと期待される装置を開発した。この装置は、腫瘍サンプル中のがん細胞の「接着性(く...