新タキソイド系薬剤ラロタキセル〔larotaxel〕がタキサン系薬剤で既治療の乳癌患者に有効

キャンサーコンサルタンツ
2008年6月

ラロタキセル〔larotaxel〕(XRP9881)の国際第2相臨床試験を実施した研究者らによって、同剤はタキサン系薬剤に耐性のある転移性乳癌に対して有意な活性を示した、と発表された。本試験の詳細はAnnals of Oncology誌2008年7月7日号に掲載された。


タキサン系薬剤は、乳癌女性の治療薬として最も有効な薬剤のひとつである。過去10年間にわたり、タキソテール®(ドセタキセル)やタキソール®(パクリタキセル)の改良について多くの試みがなされてきたが、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのはアブラキサン®(アルブミン結合パクリタキセル)だけである。アブラキサンは新薬ではなくパクリタキセルの有効成分で構成されている。しかしながら、アブラキサン製剤においてはパクリタキセルがアルブミン粒子の懸濁液の状態で供給されており、ポリオキシエチレンヒマシ油(クレモホールEL)を溶媒とするタキソールやそのジェネリック製品を上回るいくつかの利点がある。一方、ラロタキセルは前臨床試験で有意な活性が示されている新タキソイド薬剤である。

本試験では、既にタキサン系薬剤で治療を受けたことがあり、同剤に対し耐性または非耐性に分類された130人の転移性乳癌患者においてラロタキセルを評価した。その報告によると、非耐性群では全奏効率(ORR)が42%、奏効期間(DOR)の中央値は5.3ヵ月であった。耐性群ではORRが19%、DORは5.0ヵ月であった。副作用は他のタキサン系薬剤にみられるものと同様のようであった。

コメント

これらのデータは、近い将来、乳癌の初期段階での試験で、別の有効なタキサン系薬剤が使用できる可能性を示唆している。

参考文献

Dieras V, Limentani S, Romieu G, et al. Phase II multicenter study of larotaxel (XRP9881), a novel taxoid, in patients with metastatic breast cancer who previously received taxane-based therapy. Annals of Oncology. 2008;19:1255-1260.


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翻訳担当者 越智 律子

監修 島村 義樹(薬学)

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