アロマターゼ阻害剤が心疾患リスクを増大させる可能性

キャンサーコンサルタンツ
2010年12月

閉経後乳癌の治療によく用いられるホルモン療法薬であるアロマターゼ阻害剤が心疾患リスクを増大する可能性がある。2010年サンアントニオ乳癌シンポジウムでその結果が発表された。
タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤はホルモン受容体陽性乳癌の治療によく用いられるホルモン療法剤である。いずれの薬剤も乳房のエストロゲン作用を低下させることによって乳癌細胞増殖を遅らせるか増殖を止める。

アロマターゼ阻害剤にはアリミデックス(アナストロゾール)、フェマーラ(レトロゾール)およびアロマシン(エキセメスタン)がある。閉経後の女性を対象にアロマターゼ阻害剤をタモキシフェンと比較した諸試験では、アロマターゼ阻害剤の方が乳癌再発に対して高い効果を示す傾向にあった。その結果、治療ガイドラインではホルモン受容体陽性乳癌の閉経後の女性は治療のある時点でアロマターゼ阻害剤の使用を考慮することが推奨されている[1]。

タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤では有害作用が異なる。タモキシフェンには血栓と子宮内膜癌(子宮体癌)がよくみられるが、アロマターゼ阻害剤には骨量減少が多い。以前の試験にはアロマターゼ阻害剤の心臓への影響を問うものもあった。

心疾患の問題をさらに評価するために、 閉経後乳癌患者を対象にタモキシフェンとアロマターゼ阻害剤を比較した大規模臨床試験7件から研究者らが情報を収集した [2]。

タモキシフェンと比較して、アロマターゼ阻害剤の使用が心疾患リスクの26%増大につながっていた。これは大きなリスク上昇ではないが、このほかに心疾患リスク因子がある女性ではリスクがさらに高い可能性があると推測している。心疾患リスクが高い女性はさまざまな治療選択肢のリスクと利益を医師と話し合うとよい。

参考文献:
[1] Burstein HJ, Prestrud AA, Seidenfeld J et al. American Society of Clinical Oncology Clinical Practice Guidelines: Update on adjuvant endocrine therapy for women with hormone receptor-positive breast cancer. Journal of Clinical Oncology. 2010; 28: 3784-3796.

[2] Amir E, Ocana A, Niraula S, Carlsson L, Seruga B. Toxicity of adjuvant endocrine therapy in postmenopausal breast cancer patients. Presented at the 33rd annual San Antonio Breast Cancer Symposium, December 8-12, 2010. Abstract S2-7.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 佐治京子

監修 野長瀬祥兼(工学、医学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

Her2低発現乳がんに対するトラスツズマブ・デルクステカンの副作用解析の画像

Her2低発現乳がんに対するトラスツズマブ・デルクステカンの副作用解析

HER2低発現の転移乳がんに対する抗体薬物複合体であるトラスツズマブ・デルクステカン(T-DXd、販売名:エンハーツ)の画期的ランダム化第3相試験に基づく安全性解析の結果、嘔吐と吐気の発症が非...
ESMO乳がん会議2023の画像

ESMO乳がん会議2023

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)ESMO乳がん会議2023は、2023年5月11日~13日、ドイツのベルリン、およびバーチャルプラットフォームを通じオンライン上で開催される。プログ...
米国黒人女性では、乳がん検診推奨年齢50歳では遅いの画像

米国黒人女性では、乳がん検診推奨年齢50歳では遅い

ニュース米国では、人種や民族に関係なく、米国民女性に50歳から隔年で乳がん検診を受けることを推奨している。しかし、新たな解析によると、黒人女性は42歳から検診を開始する必要があるとし、...
早期HER2陽性乳がんの術後パクリタキセル+トラスツズマブは10年後も高い効果を維持の画像

早期HER2陽性乳がんの術後パクリタキセル+トラスツズマブは10年後も高い効果を維持

ダナファーバーがん研究所リンパ節転移がなく、腫瘍サイズが小さいHER2陽性乳がん患者に対する標準治療を確立した臨床試験の追跡調査結果が、この治療の長期的な有効性を裏づけている。

試験参加...