早期乳癌にはフェマーラ®とアロマシン®がタモキシフェンより有効

キャンサーコンサルタンツ
2009年1月

独立した2試験の結果、ホルモン陽性早期乳癌の初回治療として、アロマターゼ阻害薬フェマーラ® (レトロゾール)およびアロマシン®(エキセメスタン)は、タモキシフェン(ノルバデックス®)よりも転帰を改善させることが示された。この結果は、2008年度サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された。アロマターゼ阻害薬は、ホルモン陽性乳癌女性を対象に、標準的な術後補助ホルモン療法として一般に認められてきたが、既に標準的治療として長く使われているタモキシフェンとの比較試験は未だ継続中である。

閉経後ホルモン陽性乳癌に対するフェマーラとタモキシフェンを比較したBIG(Breast International Group)1-98第3相臨床試験の長期経過観察が、2008年度SABCSで発表された。フェマーラまたはタモキシフェンのいずれかを5年間投与する単独治療群、または以下の順次投与治療群(タモキシフェン2年間投与後にフェマーラ3年間投与する群[タモキシフェン2Y→フェマーラ3Y群]、あるいはフェマーラ2年間投与後にタモキシフェン3年間投与する群[フェマーラ2Y→タモキシフェン3Y群])の計4群に患者をランダムに割り付けた。2005年の中間結果報告で、フェマーラ治療群の再発低下が認められたことから、当初タモキシフェン単独群にランダムに割り付けられていた患者は、本試験の残りの過程において非盲検でフェマーラに切り替えが認められた。これらの結果は、単独治療群の経過観察中央値76か月と、盲検化した3試験群による一対比較試験2件(タモキシフェン2Y→フェマーラ3Y群に対しフェマーラ単独群。フェマーラ2Y→タモキシフェン3Y群に対しフェマーラ単独群)の経過観察中央値71か月などによる。[1]

1.  術後フェマーラ投与を5年間受けた患者は、タモキシフェン投与を受けた患者と比べ、死亡リスクが13%減少した(p=0.08)。

2.  その結果からさらに、タモキシフェンからフェマーラに切り替えた群を解析から除外すると、死亡リスクの減少は19%となった。

3.  5年生存率は、フェマーラ単独群で87.9%、タモキシフェン2Y→フェマーラ3Y群で86.2%、フェマーラ2Y→タモキシフェン3Y群で87.6% だった。

4.  有益性は、リンパ節転移陽性乳癌患者において最も顕著であった。

5.  治療成績は、フェマーラ単独群とフェマーラ2Y→タモキシフェン3Y群で同等だった。一方、タモキシフェン2Y→フェマーラ3Y群は、全生存率(ハザード比=1.13)と無病生存率(ハザード比=1.05)がフェマーラ単独群に比べ悪かった。

6.  5年経過時点での再発率は、フェマーラ単独群およびフェマーラ2Y→タモキシフェン3Y群で7.3%、タモキシフェン2Y→フェマーラ3Y群で9.1%であった。

7.  予想外の有害反応は、いずれの試験群でも発生しなかった。

閉経後女性のホルモン陽性乳癌を対象とした術後補助ホルモン療法は、初回投与をタモキシフェンではなくフェマーラで開始すべきで、フェマーラを2年間投与後、必要に応じてタモキシフェンに切り替え可能であると本試験の研究者らは述べた。

もう1つの試験は、閉経後女性のホルモン陽性乳癌を対象に、アロマターゼ阻害薬とタモキシフェンの比較を目的としたTEAM(tamoxifen, exemestane adjuvant multinational)試験である。同症例にアロマシン®(エキセメスタン)またはタモキシフェンのいずれかを5年間投与して比較するランダム化多国間第3相臨床試験である[2]。当初アロマシンまたはタモキシフェンのいずれかの単独投与群へランダムに割り付けたものの、BIG1-98試験と同様に、中間解析でアロマシンによる転帰改善が明らかにされ、タモキシフェン投与を受けていた全患者が、2.5~3年間の投与後アロマシンに切り替えとなった。この結果は、試験に変更が加えられた2.75年時点での経過観察を発表したもので、5年間経過後の結果は2009年に予定されている。

1. アロマシン初回治療群では、無病生存期間が17%改善した(p=0.02)。

2. アロマシン初回治療群では、無再発生存期間および遠隔転移するまでの期間も有意に改善された (p <0.05)。

3. 予想外の有害反応は、いずれの治療群でも発生しなかった。

閉経後女性のホルモン陽性早期乳癌に対する初回治療で、アロマシンはタモキシフェンより転帰を改善することが認められた。この結果は、同症例の治療に対し、タモキシフェンと比較した他のアロマターゼ阻害薬とも一致している。

参考文献:
[1] Mouridsen HT, et al. BIG 1-98: a randomized double-blind phase III study evaluating letrozole and tamoxifen given in sequence as adjuvant endocrine therapy for postmenopausal women with receptor-positive breast cancer. Proceedings from the 2008 San Antonio Breast Cancer Symposium. Abstract 13.
[2] Jones SE, et al.  Results of the first planned analysis of the TEAM (tamoxifen exemestane adjuvant multinational) prospective randomized phase III trial in hormone sensitive postmenopausal early breast cancer. Proceedings from the 2008 San Antonio Breast Cancer Symposium.  Abstract 15.
2009-01-19


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翻訳担当者 遠藤香利

監修 武田裕里子(薬学)

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