高齢の乳癌患者はアジュバント療法を必要としない可能性がある

キャンサーコンサルタンツ

デンマークで実施されたある研究で、腫瘍が小さく低悪性でホルモン受容体陽性である乳癌を持つ60歳以上の女性は、ホルモン療法あるいは化学療法によるアジュバント(術後)療法を必要としない可能性があることが報告された。これらの結果は、Journal of National Cancer Institutes誌に掲載された。

ほとんどの乳癌は、ホルモン受容体陽性である。そのような癌は、血中を循環する女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンに刺激されて成長する。大抵のホルモン受容体陽性乳癌の治療には、エストロゲンの働きを抑制するかもしくは阻害するホルモン療法が含まれる。これらの治療法には、アロマターゼ阻害薬として知られる薬剤と同様にタモキシフェンも含まれる。

ホルモン療法はホルモン受容体陽性の癌患者において癌再発のリスクを減らすが、副作用もある。アロマターゼ阻害薬の副作用には、関節痛や骨粗しょうなどがある。タモキシフェンの副作用には、子宮内膜(子宮)癌のリスクを高めることなどがある。乳癌治療のあとホルモン療法を実施しなくても支障のない場合は、患者はこれらの副作用は回避することができる。

術後ホルモン療法または化学療法を受けなかった乳癌患者における転帰を調べるため、デンマークの研究者が35歳から74歳までの3197人の女性について調査を行った。[1] 彼女らはすべてリンパ節転移のないホルモン受容体陽性の乳癌であった。彼女らにおける生存率は、年齢の適合する一般女性集団の生存率と比較された。

  • 全体としては、乳癌患者のほうが一般女性集団より死亡率が高かった。乳癌患者のうち970人が死亡していた。一般集団の同様グループでは、死亡していたのは737人であった。
  • 乳癌患者の死亡リスクの高さに関係する要因は、腫瘍のサイズがより大きいことと患者の年齢が若いこと(35~59歳)であった。
  • 60~74歳の患者において、小さく(10mm以下)低悪性度の癌を持つ患者における死亡リスクは、一般集団の女性のものと同程度であった。

これらの結果は、低リスクのホルモン受容体陽性乳癌を持つ高齢女性は、いかなるアジュバント療法も受けていない場合でも予後が良好(一般集団の女性の場合と同程度)であることを示している。アジュバント療法の決断は個別化させる必要があるが、付随論説は「内分泌療法のリスクと利益に関する患者の好みは、明らかに、意思決定に重要な役割を果たしている」と述べている。[2]

参考文献:

[1] Christiansen P, Bjerre K, Ejlertsen B et al. Mortality rates among early-stage hormone receptor-positive breast cancer patients: a population-based cohort study in Denmark. Journal of the National Cancer Institute. Early online publication August 31, 2011.

[2] Griggs JJ, Hayes DF. Do all patients with breast cancer require systemic adjuvant therapy? Journal of the National Cancer Institute. Early online publication August 31, 2011


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翻訳担当者 林 くれは

監修 原野 謙一(乳腺科・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

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