2007/03/06号◆癌研究ハイライト「小児がん治療の骨への影響」「乳がんと運動」「食道癌に術前放射化学療法」
同号原文|
米国国立がん研究所(NCI) キャンサーブレティン2007年03月06日号(Volume 4 / Number 10)
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◇◆◇癌研究ハイライト ◇◆◇
小児は癌や癌治療によって骨が脆弱になる場合が多い
癌治療を受ける小児が、数年後に骨粗しょう症や骨折などの骨疾患を抱えるリスクが高いことが、研究者らによって示唆されている。Cancer誌4月1日号の記事では、さまざまな研究や情報のエビデンスをまとめており、その記事の著者らは「骨塩喪失が、小児ならびに青年に対する癌治療でよくみられる続発症であることは明白である」と結論づけている。
多くの因子が寄与しているようだと、オンタリオ州ハミルトンにあるマクマスター大学の Dr. Alessandra Sala氏とDr. Ronald D. Barr氏は語る。主な要因は、メトトレキサートやイホスファミドなどの薬剤を用いた多剤併用化学療法にある。それら薬剤は、「骨に対する毒性が特に強い」と表示されているが、軟部組織腫瘍や骨腫瘍の治療に一般的に用いられている。脳腫瘍ならびに一部の白血病やリンパ腫の小児に対する頭蓋照射は、骨形成に関わる成長ホルモン障害を引き起こす原因になることがある。急性リンパ芽球性白血病は最も一般的な小児癌の1つであり、この癌ではその疾患自体が骨密度を損なう可能性があり、さらに糖質コルチコステロイドの累積投与によって例外なく骨密度が損なわれる。
これら全ての状況において、小児期に通常みられる運動性の向上は妨げられ、これにより成人期の骨粗しょう症を回避するのに必要な患者の骨密度の蓄積が妨げられるのである。
「小児癌患者の骨密度低下はさまざまな要因によって起こり、それらの改善と予防のためには総合的な方策が必要である」と著者らは結論付ける。さらなる研究が必要となる可能性のある薬剤にはビスフォスホネートとイマチニブがある。その他の方策には、より多くの身体的運動、頭蓋照射総量の制限、カルシウムとビタミンDの摂取量不足の克服が含まれる。
負荷の高い運動を長期的に続けることで乳癌リスクが低下する
長期的に激しい身体活動を続けると、浸潤性乳癌や上皮内に限局した乳癌のリスクを低下させることがカリフォルニアの研究者らによって明らかにされたことが2月26日発行のArchives of Internal Medicine誌の試験結果に掲載されている。
南カリフォルニア大学のDr. Leslie BernsteinらはNCIが出資した、California Teachers Studyの参加者107,034例を評価した。この試験は、カリフォルニア公立学校の現職ならびに退職した女性の教員と管理者を対象とし、1995-1996年に開始された前向き試験である。研究者らは参加者の身体活動レベル(適度な運動か激しい運動か)に関する情報を、過去3年間の運動状況とあわせて、高校時代から現在までの情報(もしくは対象者が55歳以上であれば54歳まで)を収集した。
毎年、週5時間以上の激しい運動に参加していた女性は、最も活動量の低い女性に比べて浸潤性乳癌リスクが低かった。適度な身体活動を長期間行うことや、過去3年間における適度な身体活動、および負荷の高い身体活動は浸潤性乳癌発症に関連がなかった。研究者らは、負荷の高い、または適度な身体活動を長期間行った女性では、エストロゲン受容体陰性の浸潤性乳癌リスクが低下することも認めたが、エストロゲン受容体陽性の浸潤性乳癌ではリスク低下はみられなかった。
参加者は、人種および民族性、乳癌家族歴、初経年齢、出産歴、閉経状態、ホルモン療法や経口避妊薬使用状況、身長、体重、食事、喫煙歴、飲酒、マンモグラフィー検査歴、乳癌生検施行歴などの乳癌関連リスク因子についても情報提供した。しかしこれらの因子は、運動と乳癌の関連性を説明するものではなかった。
「要約すると、本研究は、長期間の負荷の高いレクリエーション的な身体活動が浸潤性乳癌や上皮内に限局した乳癌のリスクに対して防御的に働いていることを裏付けるさらなる根拠となるが、適度な身体活動の有益性は不明確である」と、著者らは述べた。
食道癌に対する術前放射化学療法は生存率を向上する
Lancet Oncology誌 の電子版で2月15日に発表された、数多くの臨床試験データのメタ解析では、限局性食道癌患者に対し化学放射線併用療法や化学療法単独(化学放射線併用療法ほどではない)を術前(ネオアジュバント)に行うと有意な生存率の向上が見られることが明らかにされた。
限局性食道癌患者に対する治療は、従来外科切除のみが行われてきたが、「生存率は不良で、多くの患者が術後まもなく転移や局所再発を経験した」と、オーストラリアのUniversity of Sydney、National Health and Medical Research Council臨床試験センターの Dr. Val Gebski氏が指導する研究者らは述べた。手術合併症が高率であるため、生存率を向上する方法として,「術前補助療法に関心が向けられた」と、彼らは付け加えた。
このメタ解析では術前補助化学放射線療法と手術単独を比較した10件のランダム化比較試験(1209患者)と、術前補助化学療法と手術を比較した1724患者の8試験を含めた。
化学放射線療法の結果では、2年生存率で13%と絶対的な改善がみられ、扁平上皮癌(SCC)や腺癌の異なる組織型でも同様の結果が得られた。術前補助化学療法を検討した試験の解析では2年生存率の絶対差は7%であった。化学療法はSCC患者の全死亡に有意な効果をもたらさなかったが、腺癌患者においては有意な効果が認められた。
本メタ解析に含めたほとんどの試験は1993年以前に開始されたものである。「現在の試験では、より多い放射線量(通常50Gy)を用いており、その放射線量では微小転移を消滅させるだけではなく、目に見える腫瘍の大きさを縮小させて、ステージを低下させるより良好な結果となる可能性がある」と、研究者らはつけ加えた。
翻訳担当者 Okura 、、
監修 瀬戸山 修(薬学)
原文掲載日
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