ハーセプチンQ&A

NCI原文ページへ  原文日時:2006年6月13日

キーポイント

・ハーセプチンは幾つかの癌細胞上にあるタンパク質に結合し、癌細胞の増殖を遅らせるもしくは停止させるモノクローナル抗体の1種です。(質問1参照)

・ハーセプチンはHER2陽性乳癌を治療するために用います(質問3参照)。

・ハーセプチンには心筋障害、アレルギー反応など幾つかの深刻な副作用が伴います(質問5参照)。

・ハーセプチンは乳癌をはじめとするさまざまな種類の癌を治療するための臨床試験(調査研究)で研究されています(質問6参照)。

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1.ハーセプチンとは何ですか? ハーセプチンはどのように作用するのですか?

ハーセプチン(トラスツヅマブ)はモノクロナール抗体の1種です。抗体とは感染や他の異物と闘うために身体が産生する物質です。モノクロナール抗体は研究室でつくられ、そのうちの幾つかは特殊な癌細胞を攻撃するように設計されています。

ハーセプチンは,いくつかの癌細胞の表面上に認められるHER2もしくはerb B2というタンパク質を”過剰発現する”または非常に数多く産生している癌細胞を標的にします。ハーセプチンはHER2陽性癌細胞に結合し同細胞の増殖を遅らせるか停止させます。ハーセプチンはHER2陽性乳癌のみに用いられます。HER2陽性乳癌ではHER2タンパク質を過剰発現するかHER2遺伝子が増幅(コピー数が過剰)します。

乳癌の約20%〜30%がHER2を過剰発現しています。こうした腫瘍はHER2を過剰産生しない腫瘍に比べて速く増殖し再発(癌が再び発症)する可能性が一般的に高いです。

2.腫瘍がHER2であるかどうか検査する方法は?

腫瘍内のHER2タンパク質の量は免疫組織化学解析(IHC)と呼ばれる検査を用いて臨床検査室で測定されます。検査結果は0(陰性)から3+(強陽性)というスケールで測定されます。IHCで腫瘍が3+である患者がハーセプチンによる治療から恩恵をうける可能性が高く、腫瘍が0または1+である患者がこの治療の恩恵をうける可能性は低いと考えられています。腫瘍が2+である患者は,腫瘍がHER2陽性であるかどうか決定するために,蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH法)と呼ばれる,追加の検査を受けることが多い。FISH法は遺伝子のコピー数を測定します。HER2遺伝子のコピーを過剰産生する腫瘍はFISH法で陽性であると決定されます。

3.ハーセプチンは癌治療でどのように用いられていますか?

ハーセプチンは米国食品医薬局(FDA)でHER2陽性転移性乳癌(身体のほかの部位に拡がった乳癌)の治療として承認しています。HER2を過剰産生する転移性乳癌女性を対象とした2件の臨床試験(調査研究)でハーセプチンが安全で有効であることを立証された後にFDAは承認しました。

2005年、4件の臨床試験結果はハーセプチンがHER2を過剰発現する初期乳癌の治療にも有効であることを示しました。全4件の研究によると、ハーセプチン投与および化学療法を受けた女性患者は化学療法のみを受けた女性患者よりも生存期間が長く、乳癌の再発が顕著に減りました。

4.ハーセプチンはどのように投与されますか? ハーセプチンによくみられる副作用は何ですか?

ハーセプチンは点滴静注で投与します(薬剤を含む液体を血管内に注入する方法)。ハーセプチンの初回投与は通常90分以上の時間をかけて行い、看護師または医師が患者に副作用の徴候がないか慎重に観察します。患者がこの用量で十分許容できる場合、30分間以上かけて少量の維持量が投与されます。

ハーセプチンの初回治療の間にもっとも多く起きる副作用は発熱や悪寒です。ほかに起きる可能性のある副作用は、疼痛、倦怠感、嘔吐、悪心、下痢、頭痛、呼吸困難、発疹です。これらの副作用は通常ハーセプチンの初回治療後にはより軽度になります。

ハーセプチン投与を化学療法と併用する患者はハーセプチン単独投与の患者とは異なる副作用を経験することがあります。例えば、貧血(赤血球の数が正常値よりも少ない状態)および感染症、主に軽度の上気道感染はハーセプチン単独投与の患者に比べてハーセプチンと化学療法を併用している患者に多く認められます。患者は治療に伴う副作用に関して気になることは何でも医師と話し合うべきです。医師は副作用をコントロールするための提案をすることができるかもしれません。

5.ハーセプチンは深刻な副作用を引き起こしますか?

はい。起こすことがあります。ハーセプチンは心不全をもたらす心筋障害を引き起こすことがあります。心不全は心臓が十分な血液を身体中に送り込むことができない重度の疾患です。心不全の症状には、息切れ、呼吸困難、足先または下肢の浮腫があります。

ハーセプチンはまた肺に影響する可能性があり、すぐに治療を施さなければならないほど重篤なもしくは生命を脅かす呼吸困難を引き起こすことがあります。

さらに、ハーセプチンは重度なまたは生命を脅かす可能性がある過敏性(アレルギー)反応を引き起こすことがあります。過敏性反応には血圧低下、息切れ、発疹、喘鳴があります。過敏反応を起こすほとんどの患者は薬物が投与された時もしくは治療24時間後に反応をおこします。

こうした生命を脅かす副作用があるため、医師らは治療開始前に患者に心臓や肺の問題がないか慎重に調べます。医師および看護師は,治療中、綿密に患者の観察をします。治療中または治療後になんらかの問題を発症する患者は医師へすぐ連絡するか、最も近い緊急医療施設に行かなければなりません。

6.ハーセプチンは臨床試験継続中ですか?

はい。そうです。現在進行中の臨床試験では乳癌をはじめとするいろいろな種類の癌に対するハーセプチンの安全性および有効性を調べています。臨床試験に参加することに関心がある方は担当医と話し合われた方がよいでしょう。臨床試験に関する情報は米国国立癌研究所(NCI)の癌情報サービス(CIS)(下記参照)の1−800−4−CANCER およびインターネット上のhttp://www.cancer.gov/publicationsに掲載されているNCIの小冊子「臨床試験に参加するためには癌患者は何を知っておくべきか」で入手可能です。この小冊子では調査研究がどのように行われているか,可能性のあるベネフィットとリスクを説明しています。臨床試験に関する詳細はNCIのウェッブサイトhttp://www.cancer.gov/clinicaltrials で入手可能です。同ウェッブサイトではNCIの総合的な癌情報データベース、PDQ にリンクすることで現在進行中の特定の研究に関する詳細を提供しています。

NCIの関連資料およびウェブページ

・米国国立癌研究所のファクトシート7.2項「癌の生物学的治療に関するQ&A(原文)」([siteurl=modules/nci_factsheet/index.php?page=article&storyid=310]日本語訳[/siteurl])
・米国国立癌研究所のファクトシート7.49項、「癌標的治療に関するQ&A(原文)」([siteurl=modules/nci_factsheet/index.php?page=article&storyid=317]日本語訳[/siteurl])
・「Taking Part in Clinical Trials: What Cancer Patients Need To Know」 (臨床試験に参加するためにがん患者が知っておくべきこと)

問い合わせについて

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ウェブ:http://www.cancer.govまたはhttp://www.cancer.gov/espanol

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http://www.cancer.gov/livehelp

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  訳:有田香名実 更新:小川千穂 監修 :辻村信一(獣医学/農学博士)

翻訳担当者 有田香名実

監修 辻村信一(獣医学/農学博士)

原文掲載日 

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