食事性ビタミンDを多く摂取すると乳癌のリスクが軽減される

キャンサーコンサルタンツ
2009年2月

イタリアの研究者らはビタミンDの摂取と乳癌のリスクは反比例すると報告した。本研究の詳細は2009年2月1日版のAnnals of Oncology誌[1]に掲載されている。

食事が癌のリスクに関連して果たす役割は、長い間、研究者らが注目してきた。食事により特定の癌の発症リスクを大幅に軽減する可能性があることを示すエビデンスが蓄積されている。特定の栄養素を評価し、さらにその栄養素を食事から摂取する場合と栄養補助食品から摂取する場合の違いを評価する研究が進行中である。最近脚光を浴びている栄養素はビタミンDであり、栄養補助食品や強化ミルク、穀物、特定の魚類(サケ、サバおよびマグロ)などの食品に含まれるほか、日光に当たることによっても得られる脂溶性の栄養素である。

ビタミンDは結腸直腸ポリープのリスクを軽減することが明らかになっている。さらに、乳癌患者では診断時点における血中ビタミンDの少なさとその後の転帰の悪さには関連がみられた。研究者らはまた、幼児期および成人早期に多量のビタミンDに暴露されていると乳癌発生率が低減することを示唆している。カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者らは、1日のビタミンD摂取量をアメリカ人の現在の平均摂取量の3倍である1000 IU以上に増量すると乳癌発生率が低減する可能性があると示唆している。しかし、Women’s Health Initiative臨床試験に参加した研究者らは、カルシウムとビタミンDの補給(400 IU)をしても乳癌のリスクは軽減されないかもしれないと報告している。乳癌発生率は北方の寒冷地に住む女性で最も高く、赤道に近い地域に住む女性で最も低いという観察結果から、ビタミンDが乳癌を予防する役割を果たすとする間接的な証拠が明らかになった。研究者らはまた、日光に当たることにより、皮膚の色素沈着が少ない女性では進行乳癌のリスクが軽減されるかもしれないと報告した。

今回の報告書には、1991年から1994年の間に乳癌患者2,569人と対照者2,588人を対象に実施した患者対照研究が含まれている。本研究の著者らは、ビタミンDを食事から最も摂取している群で乳癌のリスクが21%低減していることを報告し、ビタミンDを143IU摂取すると乳癌を予防する上で効果があると示唆した。

コメント:

ビタミンDが乳癌予防に大きな役割を果たすことを示唆するデーターは増えつつあるが、本研究で得られたデーターがさらに加わる。これらのデーターは、日光に当たる量が少ない女性にとって特に重要な意義を持つ。

参考文献:

[1] Rossi M, McLaughlin JK, Lagiou P, et al. Vitamin D intake and breast cancer risk: a case-control study in Italy. Annals of Oncology. 2009;20:374-378.


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翻訳担当者 松長 えみ

監修 橋本 仁(獣医科)

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