FDAが進行軟部肉腫治療にolaratumabを迅速承認

速報

米国食品医薬品局(FDA)は本日、筋肉、脂肪、腱、または他の軟部組織に発生するがんである軟部肉腫(STS: soft tissue sarcoma)のうち、特定の種類の成人軟部肉腫患者の治療に対し、olaratumab[オララツマブ](商品名:Lartruvo)とドキソルビシンとの併用投与を迅速承認した。Olaratumabは、放射線または手術による治癒が不可能である軟部肉腫患者、およびアントラサイクリン系薬剤(化学療法)が適した治療法となっている特定の種類の軟部肉腫患者に対する治療として、FDA承認済みの化学療法剤であるドキソルビシンとの併用療法での使用が承認された。

「そのような患者にとって、ドキソルビシンに追加して用いるolaratumabは、新しい治療選択肢となります」とFDA医薬品評価研究センター抗腫瘍薬製品室長であり、FDAOncology Center of Excellence室長代理でもあるRichard Pazdur医師は述べる。「40年以上も前にドキソルビシンが承認されて以来初の、軟部肉腫の初期治療法としてFDAが承認した新療法です」。

米国国立がん研究所では、2016年には12,310人の軟部肉腫の新規症例と約5,000人の同疾患による死亡が発生すると推定している。手術による切除が不可能な軟部肉腫に対する最も一般的な治療法は、ドキソルビシンの単剤療法またはドキソルビシンと他の薬剤との併用療法である。軟部肉腫とは、筋肉、脂肪、血管、神経、腱または関節の滑膜などから発生するさまざまな種類の腫瘍の総称である。

Olaratumabは、血小板由来成長因子(PDGFplatelet-derived growth factor)受容体αを遮断する抗体である。PDGF受容体が刺激されると、腫瘍の増殖が引き起こされる。Olaratumabは、これらの受容体を遮断することにより作用し、腫瘍の増殖を遅らせる、または停止させるのに役立つ可能性がある。

Olaratumabの安全性と有効性は、25種類以上の異なる組織型の転移性軟部肉腫患者133人を対象としたランダム化試験で検討された。患者は、olaratumabとドキソルビシンの併用投与、またはドキソルビシンの単剤投与のいずれかで治療を受けた。試験では、治療を開始してから患者が亡くなるまでの期間(全生存期間)、治療を開始してから腫瘍が増殖しないまでの期間(無増悪生存期間)、腫瘍の縮小がみられた患者の割合(全奏効率)を測定した。この試験で、ドキソルビシンとolaratumabとの併用投与を受けた患者には、全生存期間において統計学的に有意な改善が認められた。生存期間中央値は、ドキソルビシンの単剤投与を受けた患者で14.7カ月であったのに対し、併用投与を受けた患者では26.5カ月であった。無増悪生存期間の中央値は、ドキソルビシンの単剤投与を受けた患者で4.4カ月であったのに対し、併用投与を受けた患者では8.2カ月であった。腫瘍の縮小は、ドキソルビシンの単剤投与を受けた患者の7.5%でみられたのに対し、併用投与を受けた患者では18.2%でみられた。

Olaratumabには、注入に伴う反応や胚または胎児への有害影響などの重篤なリスクがある。注入に伴う反応には、低血圧、発熱、悪寒、発疹などがある。Olaratumabによる治療の最も一般的な副作用は、悪心、疲労、白血球数の減少(好中球減少症)、筋骨格痛、粘膜の炎症(粘膜炎)、毛髪脱落(脱毛症)、嘔吐、下痢、食欲減退、腹痛、神経損傷(ニューロパチー)、および頭痛である。

FDAは、olaratumabの承認申請に対して、優先審査指定、画期的治療薬指定、および優先審査認定を付与した。これは、暫定的な臨床エビデンスによって、重篤または生命を脅かす疾患や症状に対する治療において有効性の大幅な改善が見込まれる可能性が示されたためである。FDAは、olaratumabを迅速承認制度下で承認している。この迅速承認制度は、臨床的有用性を予測し得る代替エンドポイントに対して医薬品の効果が示された臨床試験成績に基づき、重篤または生命を脅かす疾患または症状の治療を目的とする医薬品の承認を可能とする制度である。臨床試験依頼者は、現在進行中である、より大規模な研究を実施して、複数のサブタイプの軟部肉腫に対するolaratumabの有効性をさらに探求する予定である。

Olaratumabは、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定も受けている。希少疾病用医薬品指定とは、希少疾患の治療を目的とした医薬品の研究開発を支援し奨励するための、減税、ユーザーフィーの免除、独占販売権の資格などの優遇措置が得られる制度である。

Olaratumabは、米国インディアナ州インディアナポリスに本社を置くEli Lilly and Company社により製造販売されている。

翻訳担当者 星野 恭子

監修 遠藤 誠(肉腫、骨軟部腫瘍/国立がん研究センター中央病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肉腫に関連する記事

FDAが進行滑膜肉腫にアファミトレスゲン オートルーセルによるT細胞受容体療法を正式承認の画像

FDAが進行滑膜肉腫にアファミトレスゲン オートルーセルによるT細胞受容体療法を正式承認

8月2日、米国食品医薬品局(FDA)は、軟部肉腫の一種である転移性滑膜肉腫の一部患者の治療をを目的として、afamitresgene autoleucel[アファミトレスゲン オートル...
若年者の再発/難治性ユーイング肉腫にEWS-FLI1転写阻害薬が有望の画像

若年者の再発/難治性ユーイング肉腫にEWS-FLI1転写阻害薬が有望

MD アンダーソンがんセンター非常に悪性度の高い骨がんであるユーイング肉腫(ES)の思春期・若年成人は、治療の選択肢が少なく、再発後の予後も不良である。 Joseph Ludwig医師...
FDAが切除不能/転移性滑膜肉腫にアファミトレスゲン オートルーセルを迅速承認の画像

FDAが切除不能/転移性滑膜肉腫にアファミトレスゲン オートルーセルを迅速承認

米国食品医薬品局(FDA)2024年8月2日、米国食品医薬品局(FDA)は、化学療法歴があり、HLA-A*02:01P、-A*02:02P、-A*02:03P、-A*02:06P陽性で...
肉腫・希少がん会議ー欧州臨床腫瘍学会2024の画像

肉腫・希少がん会議ー欧州臨床腫瘍学会2024

ESMO肉腫および希少がん会議2024(3月14日〜16日、スイス、ルガーノ)では、研究者・臨床医から一流の専門家が集まり、肉腫および希少がん全般における最先端の治療およびケアを発表し...