MDA研究ハイライト2022/08/24【2】肉腫、メラノーマ

免疫療法併用療法が転移性肉腫患者に有効

進行性または転移性の軟部肉腫および骨肉腫の患者には、標準的な治療法の選択肢がほとんどない。Neeta Somaiah医師が主導する新しい研究では、複数のサブタイプの再発肉腫あるいは転移性肉腫を対象に、抗PD-L1薬であるデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)と抗CTLA-4薬であるトレメリムマブの併用治療の安全性と有効性が検証された。主要評価項目は、治療開始後12週における無増悪生存割合(PFS)であった。第2相臨床試験では、再発・転移性肉腫患者62人が登録され、57人(92%)に併用療法が適用された。副作用のプロファイルは、これまでに抗CLTA-4療法や抗PD-L1療法で示されたものと一致した。12 週の無増悪生存割合は全体で 49%であり、特定の患者集団でより高い割合となった。これらの知見は、この併用療法が安全であり、特定の肉腫のサブタイプにおいてさらなる研究を行う価値があることを示唆するものである。詳細はThe Lancet Oncology誌で確認できる。

症状のあるメラノーマ(悪性黒色腫)脳転移患者を対象とした第2相試験で、免疫療法と標的療法の併用の頭蓋内での有効性を初めて確認

ステージIVメラノーマの患者の約75%は、ある時点で脳転移を起こすと言われている。この進行性の疾患は依然として治療が困難であり、従来より、これらの患者は臨床試験の対象から除外されてきた。国際共同第2相試験であるTRICOTEL試験では、中枢神経系への転移を有する治療歴のないBRAFV600変異陽性メラノーマ患者65人を対象に、アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とコビメチニブおよびベムラフェニブ(販売名:ゼルボラフ)の併用投与を実施した。重要なことは、臨床現場では一般的に見られるものの臨床試験において十分に研究されていない、症状のある患者や副腎皮質ステロイドを使用している患者の登録を可能としていることである。MDアンダーソン脳転移クリニック共同ディレクターのHussein Tawbi医学博士らが報告するように、頭蓋内奏効率は全体で42%、症状のある患者では46%であり、このような患者集団でこうした奏効が報告されたのは初めてである。詳細はThe Lancet Oncology誌で確認できる。

日本語記事監訳:遠藤誠(肉腫、骨軟部腫瘍/九州大学病院)

翻訳担当者 伊藤彰

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