小児横紋筋肉腫で維持化学療法に延命効果-30年ぶりの進歩

ASCOの見解
「これまでよりも長い期間、維持療法により横紋筋肉腫を抑え込むことで患者にとって2つの利点が生じます。すなわち、再発防止による治癒率の上昇と重篤な副作用がほとんどなくなることです。30年にわたる研究の後、この知見により、どれだけ長い期間かかったとしても治療革新を続けるべきだという確信が持てました」と、ASCOの専門委員であるWarren Chow医師は述べた。

新たな化学療法により、がん再発リスクの高い横紋筋肉腫(筋組織の希少がん)小児患者の治癒率が向上した。ランダム化第3相臨床試験において、初回治療の後に低用量の維持化学療法を6カ月加えることで5年全生存率が73.7%から86.5%に上昇した。治療終了時点から5年後の時点で生存している横紋筋肉腫小児患者は、この時点での腫瘍の再発は極めてまれなため、治癒したとみなされる。

この知見はASCOのプレナリーセッションで発表される予定である。このセッションでは、2018年ASCO年次総会で取り上げられる5,800を超える演題のうち、患者ケアに最も大きく影響すると思われる4演題が発表される。

「横紋筋肉腫の治療は、30年間全く同じでした。さまざまな治療法が試されてきましたが、横紋筋肉腫の転帰が改善したのは本試験が初めてとなります。既存の薬剤を新たな方法で利用することで、新たな標準治療が確立されました。最も重要なのは、小児および若年成人患者において、この希少がんの再発リスクを低下させるとともに、延命に役立つ、ということです」と本研究の筆頭著者であるGianni Bisogno医学博士は述べた。Gianni Bisogno医学博士は、パドヴァ大学病院(イタリア)教授、およびEuropean Paediatric Soft tissue Sarcoma Study Group委員長である。

横紋筋肉腫について
横紋筋肉腫は筋組織由来の腫瘍であるため、身体のあらゆる部位で発症する可能性がある。しかしながら、頭部、頸部、骨盤部、および腹部で認められることがきわめて多い。横紋筋肉腫はまれな腫瘍であり、小児がんの4%を占める(米国では、毎年、約350人の小児が横紋筋肉腫の診断を受ける)。

横紋筋肉腫の予後は全般的に良好であり、最新の治療法により小児の80%が治癒する。治療法には高用量化学療法、放射線治療、外科手術などがある。しかしながら、診断時に転移が認められる、もしくは初回治療後に再発した場合、小児の治癒率はわずか20~30%となる。

本研究について
本研究では、治療困難な身体部位(例:頭部)に大型の腫瘍を有するが故に、再発高リスクと考えられる、6カ月~21歳の患者を登録した。

初回標準治療を完了したのちに、患者371人(79%が10歳以下)を治療中止する群(既存の標準療法)、または2種類の化学療法薬(ビノレルビンの静注とシクロホスファミドの経口投与)を用いた低用量維持療法を6カ月間受ける群のいずれかに無作為に割り付けた。

主な知見
診断から5年後の無病生存率(腫瘍の再発または全死亡が5年間生じないことと定義)は標準治療群では68.8%であったのに対し、維持療法群では77.6%であった。全生存率はそれぞれ73.7%と86.5%であった。

維持療法群で最も高頻度に認められた副作用は血球減少であったが、軽度であった。発熱性好中球減少症(発熱など、白血球数が極めて少ないために生じる重篤な副作用)が患者の25%で生じた。発現率は初回標準治療後よりも維持療法を行った場合の方が大幅に低かった。神経学的副作用は治療終了後に軽快した。しかしながら、ほとんどの化学療法と同様に、長期にわたる副作用が依然として発生する可能性があり、患者の監視を続ける必要がある。

次のステップ
本研究の知見により欧州の標準治療がすでに変更されており、欧州14カ国の軟部組織肉腫研究グループと本研究結果を共有している。米国における標準治療は欧州と少し異なるため、既存の治療法に維持療法を統合するためには、さらなる研究が必要である。

本研究はFondazione Città della Speranza(イタリア)より資金援助を受けた。

研究の概要

疾患小児横紋筋肉腫
試験の相と種類3相ランダム化試験
患者数371
検証した治療法標準治療+維持化学療法と標準治療の比較
主な知見

5年無病生存率中央値(mDFS)=77.6 vs. 69.8%、

5年全生存率中央値(mOS)=86.5 vs. 73.7

翻訳担当者 三浦恵子

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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原文掲載日 

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