FDAが転移非小細胞性肺がんの初回治療としてニボ+イピ+化学療法併用を承認

2020年5月26日、米国食品医薬品局(FDA)は、上皮成長因子受容体(EGFR)または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)腫瘍ゲノム異常を有していない転移・再発非小細胞肺がん(NSCLC)患者の初回治療として、ニボルマブ(販売名:オプジーボ、Bristol-Myers Squibb Co.社)+イピリムマブ(販売名:ヤーボイ、同社)併用療法、および2サイクルのプラチナダブレット化学療法による併用治療を承認した。

転移・再発NSCLC患者を対象としたランダム化非盲検試験CHECKMATE-9LA(NCT03215706)において有効性が検討された。患者は、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法および2サイクルのプラチナダブレット化学療法(n=361)、または4サイクルのプラチナダブレット化学療法(n=358)のいずれかに無作為に割り付けられた。

本試験で、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法を受けた患者は、化学療法のみを受けた患者と比較して、全生存期間(OS)が統計学的に有意な利益を示した。全生存期間中央値は14.1カ月(95%CI:13.2、16.2)対10.7カ月(95%CI:9.5、12.5)、HR( 0.69;96.71%CI:0.55、0.87)であった。

盲検独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値はニボルマブ+イピリムマブ+化学療法併用群で6.8カ月(95%CI:5.6、7.7)、化学療法群で5カ月(95%CI:4.3、5.6)であった(HR 0.70;95%CI:0.57、0.86)。BICRによる全奏効率(ORR)はそれぞれ38%(95%CI:33、43)、25%(95%CI:21、30)であると確認された。奏効期間中央値は、ニボルマブ+イピリムマブおよび化学療法群で10カ月、化学療法群で5.1カ月であった。

最も多かった有害反応は倦怠感、筋骨格痛、悪心、下痢、発疹、食欲減退、便秘、およびそう痒であり、ニボルマブ+イピリムマブ+プラチナダブレット化学療法を受けた患者らの20%以上にみられた。

本適応症に対するニボルマブ推奨用量は、360mgを3週間毎と並行して、イピリムマブ1mg/kgを6週間毎およびプラチナダブレット化学療法を2サイクル投与する。ニボルマブとイピリムマブは、病勢進行、許容できない毒性、または病勢進行がみられない患者においては最大2年間まで継続される。

オプジーボの全処方情報はこちらを参照。(*参考:日本語のオプジーボの添付文書はこちらを参照)

ヤーボイの全処方情報はこちらを参照。(*参考:日本語のヤーボイの添付文書はこちらを参照)

本申請にあたりFDAは、Project Orbisの一環として、オーストラリア薬品・医薬品行政局(TGA)、カナダ保健省、およびシンガポール健康科学庁(HSA)と共同審査を行った。FDAは予定より2カ月早く本申請を承認した。FDA および HSA がほぼ同時期に承認した一方、オーストラリア TGA およびカナダ保健省は本申請の継続審査中である。

この審査では、全臨床適応を提出する前にデータ提出を合理化するリアルタイム・オンコロジー・レビュー(RTOR)およびFDAによる評価を円滑に進めるために申請者が任意で申請を行うAssessment Aidが用いられた。

本申請は優先審査および優先承認審査薬指定を受けた。FDAの迅速承認プログラムについては、企業向けガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品および生物学的製剤」(the Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 吉松由貴(呼吸器内科/飯塚病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

AACR:術前免疫化学療法+術後デュルバルマブにより肺がんの転帰が有意に向上の画像

AACR:術前免疫化学療法+術後デュルバルマブにより肺がんの転帰が有意に向上

MDアンダーソンがんセンター

第3相試験で、免疫療法と化学療法の併用は化学療法単独と比較して、疾患の再発、疾患の進行、疾患による死亡の割合が32%低下したことが判明した。

抄録:CT005...
がん臨床試験の合理化モデル「Pragmatica-Lung」試験、肺がん患者登録を開始の画像

がん臨床試験の合理化モデル「Pragmatica-Lung」試験、肺がん患者登録を開始

米国国立がん研究所(NCI) プレスリリース進行した非小細胞肺がん(NSCLC)を治療する2剤併用療法の第3相ランダム化臨床試験(NCT05633602)の立ち上げに米国国立衛生研究所...
切除可能な非小細胞肺がんにトリパリマブの画像

非小細胞肺がんにトリパリマブ+化学療法で無イベント生存を改善

ASCOの見解  「この研究は、外科的に切除可能なIII期の非小細胞肺がん患者において、外科的切除前に行う術前免疫療法+化学療法という現在の標準治療に、新しく周術期免疫療法のパラダイムを立てる可能性を示しています」
デュルバルマブ術前/術後療法は切除可能な非小細胞肺がんの転帰を改善の画像

デュルバルマブ術前/術後療法は切除可能な非小細胞肺がんの転帰を改善

米国がん学会(AACR)AEGEAN試験において、手術前後にデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)をベースにした治療を行った患者は、疾患の再発や進行イベントのリスクが32%低下した。 ...