2017年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)ハイライト

2017年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)ハイライト

2017年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)は、131カ国から約24,000人が参加する国際的なイベントになった。参加者の多い上位10カ国は、米国、フランス、スペイン、英国、ドイツ、イタリア、スイス、中国、日本およびロシアであった。

記録的な数のアブストラクトが提出され、1,736件が選択された。画期的な研究は55件の最新アブストラクトで明らかにされた。

ESMO 2017の研究は、同時にNew England Journal of Medicine (NEJM)、Lancet OncologyおよびAnnals of Oncologyなどの主要な科学雑誌に発表された。

ESMO 2017で発表された臨床治療を変える可能性のある研究には、以下が含まれる。

・PACIFIC試験: 局所進行性で切除不能なステージ3非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新たな標準治療

・IFCT-0302試験: 切除されたNSCLCにおける通常のコンピュータ断層(CT)スキャンへの問題提起

・COMBI-AD試験: 高リスクメラノーマ(悪性黒色腫)のための新規術後化学療法オプション

・CheckMate 238試験: 外科的切除を受けた再発リスクが高いステージ3/4メラノーマ患者のための術後化学療法の改善

・LORELEI試験: エストロゲン受容体陽性およびHER2陰性早期乳がんにおける顕著な腫瘍縮小効果

・MONARCH 3試験: ホルモン受容体陽性、HER2陰性の進行性乳がんを有する閉経後女性のための新たな初期治療法での効果改善

・ARIEL 3試験: 再発卵巣がんのための新しい維持療法

・RANGE試験: 進行性または転移性尿路上皮がんに対する有望な治療法

・CheckMate 214試験: 腎がん死亡リスクを減少させる併用療法

研究者らはがん予防の重要性についても強調した。ESMO次期会長であるJosep Tabernero教授は「40%のがんは予防可能である」と述べた。

彼は続けて、「腫瘍学は薬についてだけでなく、禁煙、アルコール摂取の軽減、赤身肉を控えたバランスのとれた食事、運動そして発がん性を示す有害物質への暴露回避など、がんの罹患率減少につながる生活習慣の変化についても強調すべきである」と述べた。

政策面については、がん治療の持続可能性と費用対効果について議論があった。腫瘍学における新しい薬剤であるバイオシミラーは、治療へのアクセス促進やヘルスケアシステムにおける負担軽減に有効な選択肢として発表された。

欧州がん研究協会(EACR)との協力で開催されたESMO2017の主要テーマは、「患者の治療成績改善のために腫瘍学にサイエンスを統合すること」であった。

2018年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)へご参加ください。2018年10月19日から23日までドイツのミュンヘンで開催される学会で、お会いできるのを楽しみにしております。

翻訳担当者 中野駿介

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

米FDAが非扁平上皮非小細胞肺がんにセバベルチニブを迅速承認の画像

米FDAが非扁平上皮非小細胞肺がんにセバベルチニブを迅速承認

2025年11月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身療法歴のある局所進行または転移性の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)成人患者のうち、FDA承認済み検査でHER2(ERBB...
手術可能な中皮腫に術前・術後ニボ+イピの安全性、有効性を初めて示した臨床試験の画像

手術可能な中皮腫に術前・術後ニボ+イピの安全性、有効性を初めて示した臨床試験

ジョンズ・ホプキンスのキンメルがんセンターとブルームバーグ・キンメルがん免疫療法研究所の研究者らが主導した新たな研究によると、手術前後の併用免疫療法薬を用いた新たな治療法が、手術可能な...
EGFR変異非小細胞肺がんで、オシメルチニブと化学療法の併用が全生存期間を延長の画像

EGFR変異非小細胞肺がんで、オシメルチニブと化学療法の併用が全生存期間を延長

標準の一次治療であるEGFR-TKI療法に化学療法の追加で有益性を確認: ダナファーバーが共同で主導した第3相FLAURA2試験の最終解析

EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCL...
肺がんの新たな局面:喫煙歴のない若年女性の画像

肺がんの新たな局面:喫煙歴のない若年女性

主なポイント:肺がんは若い女性や非喫煙者においてますます多く診断されるようになっている。新規肺がん診断のほぼ20%を非喫煙者が占めている。住宅内のラドン濃度を測定することは、肺...