肺がんの再発・転移と生存に関する指標が治療選択に役立つ可能性

肺がんの再発・転移と生存に関する指標が治療選択に役立つ可能性

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2015年3月23日

肺がんの転移や再発と、その後の肺がんによる死亡リスクを予測する予後因子について論じた新たな研究が発表された。米国国立がん研究所(NCI)の研究者らは、イタリアのロンバルディ地方で、2002年から2005年の間に肺がんと診断されEnvironment and Genetics in Lung cancer Etiology(EAGLE)試験に登録した患者およそ2100人を対象に、これらの指標を評価した。研究者らは、外科的切除術を受けた患者(病期IA~IIIA期)と外科的切除以外の治療を受けた患者(IIIB~IV期)の転移および再発のリスクを推定した。I期の肺がんは、腫瘍サイズも小さく、がんが生じた部位に限局しているが、IV期になると全身に拡がっている。研究者らは、病期や悪性度、肺がんの組織型を問わず、この研究に参加した患者が局所再発よりも遠隔転移を起こす頻度が高いことを突き止めた。専門家らは、この推定を一般集団に適用できる可能性があると指摘した。この研究は、2015年3月23日のJNCI電子版で発表された。

NCIのがん疫学・遺伝学部門の上席研究員であるMaria Teresa Landi医学博士と同僚らは、そのほかの重要な予後パターンを記録した。その結果、患者の半数以上が転移後1年以内に死亡していた。非小細胞性肺がんの外科的切除術を受けた患者は、がんの悪性度が高いほど脳転移のリスクも増大していた。IIA期の患者は、IB期の患者に比べがん再発、あるいは死亡の可能性が大幅に高かった。IA期とIB期では、患者の約1/3が再発していた。IIA期、IIB期、あるいはIIIA期と診断された患者では、約2/3が再発していた。再発の絶対リスクは、腺がんでも扁平上皮がんでも実質的に同等であった。これらのデータは、肺がん全体に対するだけでなく特定のサブグループに対しても、より効果的な薬物治療の必要性があることを浮き彫りにしている。この研究で報告された肺がんの各病期におけるリスクは、症例の絶対数で解析精度のパワーが左右される臨床試験を設計する際に活用できる可能性がある、と研究者らは指摘している。

原文

翻訳担当者 菊池明美

監修 後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

米FDAがHER2 TKD活性化変異陽性の肺がん(NSCLC)にゾンゲルチニブを迅速承認の画像

米FDAがHER2 TKD活性化変異陽性の肺がん(NSCLC)にゾンゲルチニブを迅速承認

2025年8月8日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身療法を受けたことのある切除不能または転移性の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)の成人のうち、FDA承認の検査によってHER2(...
肺がんの術前ニボルマブ免疫療法+化学療法は長期生存を有意に改善の画像

肺がんの術前ニボルマブ免疫療法+化学療法は長期生存を有意に改善

世界のがん死亡原因の第1位である手術可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、術前化学療法に免疫療法薬を追加することで、化学療法単独と比較して長期生存が全体的に改善するという画期...
進行ステージIII非小細胞肺がんに対する化学免疫療法戦略の有望性の画像

進行ステージIII非小細胞肺がんに対する化学免疫療法戦略の有望性

研究タイトル切除不能および切除可能境界のステージIII非小細胞肺がんに対して抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬と化学療法を併用する術前療法概要ダナファーバーが...
米FDAがEGFRエクソン20挿入変異を伴う転移非小細胞肺がんにsunvozertinibを迅速承認の画像

米FDAがEGFRエクソン20挿入変異を伴う転移非小細胞肺がんにsunvozertinibを迅速承認

2025年7月2日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDA承認検査で上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異が検出された局所進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の...