インターフェロンα-2bでリンパ腫様肉芽腫症の生存期間が大幅に延長

NCI(米国国立がん研究所)ニュースリリース

米国国立衛生研究所(NIH)が実施した臨床試験の結果から、悪性度が低いリンパ腫様肉芽腫症患者が免疫療法の一種であるインターフェロンα-2bによる治療を受けると、診断後、何十年も生存しうることが明らかになった。リンパ腫様肉芽腫症は、エプスタイン・バーウイルス感染によって引き起こされる、まれな前がん状態である。未治療のまま放置すると進行して高悪性度型となる。この型は予後が不良で、すぐに悪性度の高く致命的なB細胞リンパ腫に変化する可能性がある。

NIHの一部である米国国立がん研究所(NCI)のがん研究センターが主導した第2相試験では、インターフェロンα-2bによる治療を受けた患者の生存期間の中央値は約20年間であった。対照的に、過去の研究では、リンパ腫様肉芽腫症患者の生存期間中央値は2年未満であったと報告されている。

この結果は、免疫療法が低悪性度の腫瘍から高悪性度の腫瘍への進行を防ぐことができることを示唆している。この結果は、2023年3月31日、Lancet Haematology誌に掲載された。

「私たちは、このまれな疾患において、低悪性度の腫瘍に対する新たな免疫療法に基づくアプローチを用いることが、化学療法や副腎皮質ステロイドなどの過去の治療より有効であり、生存期間を改善することを明らかにしました」と、本試験を共同主導したNCIがん研究センターのChristopher J. Melani医師 は述べた。

「この研究結果は、このまれなリンパ腫様肉芽腫症に対する標準治療を決定する上で重要な貢献となると思われます」。

リンパ腫様肉芽腫症は、Bリンパ球と呼ばれる白血球が過剰に産生される病気である。リンパ腫様肉芽腫症の患者は通常、肺、中枢神経系、皮膚、肝臓、および腎臓に病変が認められる。その症状としては、咳、息切れ、発熱、体重減少、疲労などがある。現在、高悪性度の患者には化学療法が標準治療であるが、低悪性度の患者に対する標準治療はない。

「リンパ腫様肉芽腫症は珍しい病気ですが、高悪性度の腫瘍の影響で身体が衰弱することがあります」と、米国国立アレルギー・感染症研究所の感染症研究室のチーフで、本試験の共同責任者であるJeffrey Cohen医師は述べている。「このように重症化するのを防ぐための、インターフェロンα-2bのような、より良い方法が必要です」。

NIHでは、1980年代からリンパ腫様肉芽腫症について研究している。1990年代初頭、NCIがん研究センターのWyndham Wilson医師が、低悪性の腫瘍はエプスタイン・バーウイルスに対する免疫反応の欠陥に起因するため免疫療法で治療可能であるが、高悪性度の腫瘍は制御不能な細胞増殖を抑制するために化学療法が必要となる、という仮説を立てた。

Wilson医師と研究者らは、低悪性度のリンパ腫様肉芽腫症の患者4人を5年にわたりインターフェロンα-2bで治療した結果、そのうちの3人の患者の疾患の徴候がすべて消失し、完全寛解と呼ばれる状態になった。本試験は、リンパ腫様肉芽腫症を対象としたインターフェロンα-2bの第2相試験の基礎を築いたが、この疾患はまれであり、試験の実施に十分な患者数を集めることが難しいため、完了までに30年かかっている。

「このような、他の誰も実施できないような研究、しかもこのような特別な疾患に対して今まで誰も実施していない研究を実施するという、NIH独自の実施能力が如実に表れています」と、本試験の共同責任者であるWilson医師は述べている。

本試験には、リンパ腫様肉芽腫症の患者67人(低悪性37人、高悪性30人)が参加した。被験者全員が、まだ腫瘍に対する治療を受けていないか、受けた他の治療の効果がみられないか、治療後に再発していた。

初回治療で、低悪性度の患者の多くは、インターフェロンα-2bの週3回の皮下注射を1年間にわたり用量を増やしながら受けた。高悪性度の患者の多くは、3週ごとの化学療法の点滴静注を6サイクル受けた。

いずれの群も改善し、インターフェロンα-2bによる治療では44人中27人(61%)、化学療法では17人中8人(47%)で腫瘍が消失した。

初回治療後、一部の患者にはもう片方の治療を行った(これをクロスオーバー法の治療と呼ぶ)。免疫療法後に悪化した低悪性度の患者には化学療法を、化学療法後に再発した高悪性度の患者にはインターフェロンα-2bを投与した。これまでの研究で、化学療法で高悪性度の腫瘍が消えた後、低悪性度の腫瘍が再発する可能性があることが示されている。

クロスオーバー法による治療もまた有効であり、化学療法後にインターフェロンα-2bを投与した患者8人中4人(50%)と、インターフェロンα-2bの投与後に化学療法を投与した患者15人中7人(47%)で腫瘍が消失した。

全生存期間の中央値は、初回治療でインターフェロンα-2bの投与を受けた患者で20.6年、クロスオーバーでインターフェロンα-2b投与を受けた患者で19.8年であった。初回治療で化学療法を受けた患者での全生存期間の中央値は12.1年で、クロスオーバーで化学療法を受けた患者では未到達であった。

インターフェロンα-2bによる治療で最も多かった副作用は白血球数の低下であり、化学療法で最も多かった副作用は白血球数の低下および感染症であった。重篤な副作用は、インターフェロンα-2bによる治療を受けた患者の4分の1しか発現しなかったのに対し、化学療法による治療を受けた患者では3分の2近くが発現した。

ニボルマブなどの多くの新たな免疫療法薬は、低悪性度のリンパ腫様肉芽腫症やその他のエプスタイン・バーウイルス関連疾患の治療に使用できる可能性があり、また副作用も少ない可能性がある。

「インターフェロンα-2bの試験により、免疫療法が低悪性度のリンパ腫様肉芽腫症患者の生存期間を改善させることが立証されました」とMelani医師は述べている。「今、私たちは、現在の治療法の有効性を向上させることができるかどうかを確認するために、忍容性が高く、これまでにない免疫療法薬を検討することができます」。

本試験は、NCIおよび米国国立アレルギー・感染症研究所の施設内研究プログラムから資金提供を受けている。

  • 監訳 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)
  • 翻訳担当者 瀧井希純
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  • 原文掲載日 2023年4月4日

【この翻訳は、米国国立がん研究所 (NCI) が正式に認めたものではなく、またNCI は翻訳に対していかなる承認も行いません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】"

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