【ASH24】モノクローナル抗体ELA026が、悪性腫瘍関連血球貪食性リンパ組織球症の生存期間を改善

【ASH24】モノクローナル抗体ELA026が、悪性腫瘍関連血球貪食性リンパ組織球症の生存期間を改善

新たに診断された悪性腫瘍関連血球貪食性リンパ組織球症患者を対象とした第Ib相試験で、100%の奏効率を確認

悪性腫瘍関連血球貪食性リンパ組織球症(mHLH)(まれで悪性度が高く、過剰な炎症反応をおこしている状態)の成人患者が、ファースト・イン・クラスのモノクローナル抗体、ELA026による治療で、2カ月の時点で100%の奏効率と生存率の改善を達成したとMDアンダーソンがんセンターの研究者らが報告した。

本第1b相試験のデータは、第66回米国血液学会(ASH)年次総会・学術集会(2024年12月開催)にて、白血病学の助教で、この試験の治験責任医師であるAbhishek Maiti医師により発表された。この結果から、ELA026による早期介入は、選択肢の少ない患者にとって有意義な臨床的利益をもたらす可能性が示唆される。

「mHLHを伴うがん患者さんは、通常化学療法を行いますが、化学療法は、その副作用とHLHによる臓器機能低下も同時に起こることから、原因となっているがんを治療する上でしばしば困難を引き起こします。」とMaiti氏は言う。「この治療は、mHLHのフロントライン治療として忍容性が高く、精度の高いアプローチによって穏やかに疾患をコントロールできるので、原因となっているがんに対する治療を同時に行うことが可能になります」。

悪性腫瘍、感染症、自己免疫疾患や、免疫療法やCAR-T細胞療法などの治療が引き金となって発症するmHLHは、最初の免疫反応後にT細胞やマクロファージを不活性化することができないために起こる。この疾患は臓器不全を引き起こすことがあり、2カ月後の死亡率は約50%である。現在、mHLHに対して承認されている治療法はない。

ELA026は、骨髄系細胞に存在するタンパク質SIRPα/bとTリンパ球に存在するSIRPγを標的として作用し、これらのタンパク質を枯渇させる。国際共同非盲検単群試験で、患者はELA026を静脈内または皮下投与で12週間投与された。

この試験には、再発・難治性の二次性血球貪食性リンパ組織球症(sHLH)患者7人と、フロントライン治療としてELA026による治療を受けている15人、合計22人のsHLH患者が登録された。以前のコホートでは、再発・難治性sHLHの転帰は、フロントライン治療に比べて不良であったため、今回はELA026による治療が最も有益であると予測される患者に焦点を絞った。

フロントライン治療を行ったmHLH患者12人のうち、58%がT細胞リンパ腫、17%がB細胞リンパ腫、17%が白血病、8%がホジキンリンパ腫であった。参加者の年齢中央値は47歳であった。

4週目までのフロントライン治療によるELA026の奏効率は100%であり、2例が修正完全奏効、10例が部分奏効であった。フロントライン治療を受けたmHLH患者では、生存率は2カ月時点で92%で、データカットオフ時点では全生存期間の中央値は未達であった。

再発/難治性の血球貪食性リンパ組織球症患者は、治療により奏効を得たが、生存利益は得られなかったようである。研究者らは、有意義な臨床的利益を得るために早期の介入を推奨している。

副作用は治療に関連したインフュージョンリアクションと血球減少症であったが、支持療法と投与量の変更で管理可能であった。

「これらの初期結果は期待できるもので、患者さんにより良い転帰をもたらすためにmHLHへの早期介入の必要性を裏付けています」とMaiti氏は述べた。「このまれな悪性度の高い疾患の患者さんにとって、ELA026が、効果のある治療薬となるかを評価できるよう、この試験の次の段階を楽しみにしています」。

この試験におけるMDアンダーソンのその他の協力者は他に、白血病科教授のNaval Daver医師、リンパ腫/骨髄腫科教授のSwaminathan Iyer医師、小児科助教授のDavid McCall医師など。
本試験はElectra Therapeutics社から資金提供を受けた。Maiti氏はElectra社から研究支援を受けている。共著者の全リストおよび開示情報はこちらを参照のこと。

  • 監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)
  • 記事担当者 平沢沙枝
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  • 原文掲載日 2024/12/9

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