FDAが多発性骨髄腫にベランタマブ・マフォドチンを承認

2020年8月5日、米国食品医薬品局(FDA)は、抗CD38モノクローナル抗体、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬を含む4レジメン以上の治療歴のある再発または難治性多発性骨髄腫の成人患者を対象に、ベランタマブ・マフォドチン(販売名:Blenrep、GlaxoSmithKline社)を迅速承認した。

ベランタマブ・マフォドチンは、多施設共同非盲検試験であるDREAMM-2(NCT 03525678)で評価された。患者には、ベランタマブ・マフォドチン2.5mg/kgまたは3.4mg/kgを3週間ごとに1回、疾患進行もしくは許容できない毒性が認められるまで静脈内投与した。

有効性は、国際骨髄腫ワーキンググループの統一奏効基準を用い、独立判定委員会により奏効率(ORR)と奏効期間に基づいて評価された。 ORRは31%(97.5%信頼区間[CI]:21%~43%)であった。奏効した患者の73%で6カ月以上の奏効期間が認められた。これらの結果は、推奨用量2.5mg/kgを投与された患者で認められた。

処方情報には枠組み警告が含まれ、ベランタマブ・マフォドチンが角膜上皮に変化を引き起こし、重度の視力低下や角膜潰瘍などの視力の変化、霧視やドライアイなどの症状をもたらすことが記載されている。治療開始前、各コースでの薬剤の投与前、症状悪化時には速やかに、眼科検査が必要となる。

眼毒性のリスクがあるため、ベランタマブ・マフォドチンは、BLENREP REMSと呼ばれるリスク評価・軽減戦略(REMS)に基づく制限プログラムを介してのみ入手することができる。

ベランタマブ・マフォドチンを投与された患者の20%以上にみられた副作用は、角膜症、視力低下、悪心、霧視、発熱、注入に伴う反応、および疲労であった。

ベランタマブ・マフォドチンの推奨用量は、2.5mg/kgであり、3週間ごとに1回、約30分間かけて点滴静注する。

BLENREPの全処方情報はこちらを参照。

本適応は、奏効率に基づき、迅速承認制度のもとで承認された。本適応の継続的な承認には、検証的試験において臨床的有用性の検証および説明が条件となる可能性がある。

本審査には、臨床に関するあらゆる申請の出願に先立ちデータの提出を簡素化したReal-Time Oncology Review(RTOR)、およびFDAによる評価を円滑に進めるために申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。

ベランタマブ・マフォドチンは、FDAよりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)、画期的治療薬および優先審査の指定を受けた。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、企業向けガイダンス「重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 中島 節

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

モメロチニブは骨髄線維症の症状や貧血を有意に改善の画像

モメロチニブは骨髄線維症の症状や貧血を有意に改善

第3相試験により標準療法を上回る意味のある効果が報告された骨髄線維症を標的治療薬モメロチニブで治療した場合、疾患関連症状(貧血や脾臓肥大など)に臨床的に有意な改善がみられたことが、テキ...
高リスクくすぶり型骨髄腫の治療効果予測に免疫プロファイルが関与の画像

高リスクくすぶり型骨髄腫の治療効果予測に免疫プロファイルが関与

多発性骨髄腫の前段階にいる多くの患者では、早期治療により骨髄腫への進行を遅らせることが可能である。ダナファーバーがん研究所の研究者らによる新たな研究で、免疫系細胞に認められる変化から、高リスク...
FDAが再発または難治性多発性骨髄腫にteclistamabを承認の画像

FDAが再発または難治性多発性骨髄腫にteclistamabを承認

2022年10月25日、米国食品医薬品局は、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤、抗CD38モノクローナル抗体を含む4ライン以上の治療を過去に受けたことがある再発または難治性多発性骨髄腫の成人患者に対し、初の二重特異性T細胞誘導抗体(BCMA:
GPRC5D抗原を標的としたCAR-T細胞療法が抵抗性多発性骨髄腫に有効性を示すの画像

GPRC5D抗原を標的としたCAR-T細胞療法が抵抗性多発性骨髄腫に有効性を示す

ダナファーバーがん研究所、スローンケタリング記念がんセンター、およびロズウェルパーク総合がんセンターの研究者らは、多発性骨髄腫患者を対象として、まだ十分に解明されていない細胞タンパク質を標的とするよう操作された免疫系T細胞による治療法を検討