骨髄系腫瘍に対する造血幹細胞移植の新たな研究成果-ASH2018

造血幹細胞移植を受けた骨髄系腫瘍の患者の成績向上に関連するダナファーバーがん研究所の研究者らによる複数の報告が12月1~4日に行われた米国血液学会(ASH)年次総会において発表された。これらの研究は、移植後の再発予防や、低用量化学療法を用いた移植前処置が検討されるべき患者選択の方法について一石を投じるものである。

2つの演題を紹介する。

HLA発現の欠失非血縁適合ドナーからの造血幹細胞移植後の白血病再発と関連する

遺伝子の変化に伴う腫瘍細胞のHLAの欠失は非血縁適合ドナーから造血幹細胞移植を受けた骨髄系腫瘍の再発と関連する可能性があるとダナファーバーがん研究所の研究者らは報告する。HLAとは免疫系が正常の細胞と病的な細胞を見分けるために使用されるタンパク質である。HLAの喪失によって腫瘍細胞が免疫系から逃避して再び増殖するようになると考えられている。

12月3日月曜日、太平洋標準時刻午後2時45分にマンチェスター・グランドハイアット・サンディエゴのグランドホールDで行われるセッション723での口演で報告されるこの研究成果は、移植後の再発を防止する免疫学的アプローチについて新たな展望を示唆するものである。

急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などの骨髄系腫瘍患者は造血幹細胞移植により寛解することが多いが、一部の患者で移植1年以上経過して疾患が再発する。研究者らは、これらの遅発性再発が腫瘍細胞の遺伝子が変異し移植された免疫系細胞からの認識や攻撃を免れた結果であるかどうかを判断するため研究を立案した。

研究者らはHLA完全一致ドナーまたはHLA部分合致ドナーから造血幹細胞の移植を受けた後に再発したAML患者やMDS患者合計25人の腫瘍細胞に対してゲノム解析を行った。サンプルは移植前、移植100日後、および再発時に回収された。研究者らは各サンプルに対して骨髄系腫瘍への関与や免疫系からの逃避と関連すると考えられる187個の遺伝子について変異解析を行なった。

研究者らは移植後に腫瘍細胞がHLAを喪失した3人の患者を特定した。この患者のうち2人は完全一致ドナーから幹細胞を移植されていた。ひとりの患者は非血縁部分合致ドナーから移植されていた。これらの結果は HLAの喪失により、患者の腫瘍細胞内で重要となる微小な異常を、ドナーの免疫系が検出できなくなることを示唆している。

「ドナーの免疫系は、骨髄移植後に疾患を治癒させるために不可欠なものです」と、研究の指揮を補佐したダナファーバーがん研究所の医師でありハーバード大学医学部助教のR. Coleman Lindsley医学博士は語った。「われわれは、一部の白血病がドナーの免疫攻撃から逃避することでどのように再発するか明らかにしました」。

骨髄異形成症候群に対する造血幹細胞移植において高用量化学療法の治療関連死のリスクとテロメア長が関連する

血液細胞のテロメア(染色体の末端を保護する構造)が短い骨髄異形成症候群(MDS)患者は、テロメアが長い血液細胞を有する患者と比較して、造血幹細胞移植の前処置に用いられる高用量化学療法による死亡のリスクが高いとダナファーバーがん研究所の医師らは報告する。このような患者に対しては低強度化学療法レジメンを用いて前処置を施行することで治療関連死のリスクが低減される可能性がある。

この研究の結果は、ドナーから造血幹細胞移植を受けた1,514人のMDS患者からの全血DNAサンプルにおけるテロメア長の測定に基づいている。40歳以上の患者について、テロメア長が中程度以下である患者はテロメアが長い患者と比較して全生存について不良であることを研究者らは見出した。テロメア長と移植関連の死亡との関連性は、移植前処置として高強度化学療法を受けた患者にのみ当てはまり、強度の低減されたレジメンを用いた前処置で移植された患者については当てはまらなかった。

テロメア長との遺伝的な関係を調査するため、研究者らは、テロメア維持に関与することが知られている7つの遺伝子に対して遺伝子配列を解析した。その結果、これらの遺伝子のうち、TERT、TERC、DKC1 3つの変異が血液細胞のテロメアが短く移植の転帰が不良であったMDS患者と関連があることを見出した。

「この研究により、テロメアが短く骨髄移植の合併症を最も受けやすいMDS患者集団が特定され、より個別化された治療方法への道が示されます」と、研究の統括著者であるLindsley博士は語った。

この知見は、12月3日月曜日、午後3時30分にマンチェスター・グランドハイアット・サンディエゴのグランドホールAで行われるセッション637での口演で議論される予定である。

ダナファーバーのASHについての活動の完全な詳細はこちら

翻訳担当者 串間貴絵

監修 佐々木裕哉(血液内科/横須賀米国海軍病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

白血病に関連する記事

【ASCO2024年次総会】アシミニブは新規診断白血病(CML)の治療選択肢として有望の画像

【ASCO2024年次総会】アシミニブは新規診断白血病(CML)の治療選択肢として有望

ASCOの見解(引用)「アシミニブ(販売名:セムブリックス)は、現在の標準治療である分子標的治療薬と比較して優れた有効性を示し、有害事象、投薬の中断および中止が少なく、安全性プ...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】進行した急性骨髄性白血病に新規メニン阻害薬が有望の画像

【米国血液学会(ASH)】進行した急性骨髄性白血病に新規メニン阻害薬が有望

MDアンダーソンがんセンター特定の遺伝子変異を有する白血病に有望な効果が、MDアンダーソン主導の2つの臨床試験で示されるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の2つの臨床...
再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望の画像

再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望

オハイオ州立大学総合がんセンターオハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG.ジェイムズがん病院リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC – James)の研究者らが研究している新しい...