FDAが慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫(FL)、小リンパ腫(SLL)の再発患者にイデラリシブを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

速報

米国食品医薬品局(FDA)は2014年7月23日、3種類の血液悪性腫瘍治療薬としてidelalisib[イデラリシブ](Zydelig)を承認した。

イデラリシブは、慢性リンパ性白血病(CLL)が再発した患者の治療を目的として通常承認された。本剤は、CLL以外に認められる医学的状態(併存疾患)によりリツキシマブ(リツキサン)単剤投与が適切な治療法と考えられる患者を対象に、リツキシマブと併用投与される。イデラリシブはFDAによる画期的治療薬指定薬としては5番目、またCLL治療薬としての同指定は3番目の新薬となる。

FDAはまた、濾胞性B細胞性非ホジキンリンパ腫(FL)の再発患者、また他の非ホジキンリンパ種である小リンパ種(SLL)の再発患者での治療を目的としてイデラリシブを迅速承認した。イデラリシブは全身性の治療を2回以上受けた患者での使用を目的とした薬剤である。

「1年も経たないうちに、慢性骨髄性白血病の治療薬に大きな進展がみられています」と述べたのはRichard Pazdur医師、FDA医薬品評価研究センターの血液腫瘍製品室長である。「イデラリシブのCLL治療薬としての承認は、画期的治療薬指定プログラムの取り決めを反映しており、また医薬品の開発、審査および承認を迅速化するために製造販売業者と協働するFDAの取り組みを示したものです」。

FDAはCLL治療薬としてこれまで、obinutuzumab[オビヌツズマブ](Gazyva)を2013年11月に、ibrutinib[イブルチニブ](Imbruvica)を2014年2月に、また、オファツムマブ(アゼーラ)の新規適応を2014年4月にそれぞれ承認している。オビヌツズマブおよびオファツムマブの両剤も同様に、CLLを適用として画期的治療薬指定を受けている。この2剤と同様に、イデラリシブも希少疾患の治療に用いられることから希少疾病用医薬品指定を受けた。

再発性CLLに対するイデラリシブの安全性および有効性は、患者220人をイデラリシブ+リツキシマブ投与群またはプラセボ+リツキシマブ群に無作為割付した臨床試験で確立されている。この臨床試験は、予定していた初回中間解析時点で有効性が示されたために早期中止となった。イデラリシブ+リツキシマブ投与群では病勢進行を伴わない生存期間(無増悪生存期間)が10.7カ月以上となる可能性が示され、これに対しプラセボ+リツキシマブ投与群では5.5カ月であった。2回目の中間解析結果でも引き続き、イデラリシブ+リツキシマブ投与群ではプラセボ+リツキシマブ投与群と比較し統計学的に有意な改善が示された。

また再発性FLおよび再発性SLLに対するイデラリシブの安全性と有効性は、増殖の遅い(低悪性度)非ホジキンリンパ種患者123人で確立されている。試験に参加した患者全員にイデラリシブを投与し、投与開始後での完全または部分的な消失(客観的奏効率:ORR)について評価した。客観的奏効率は、再発性FL患者では54%、また再発性SLL患者では58%であった。

FDAはイデラリシブをFLおよびSLLの治療を目的として優先審査プログラムで審査を行った。この迅速承認制度は、臨床的有用性を予測し得る代替エンドポイントに対して医薬品の効果が示された臨床試験成績に基づき、重篤な疾患や生命を脅かす疾患の治療を目的とする医薬品の承認を可能とする制度である。本制度では、有望な新薬を逸早く患者が利用できるようにする一方で、製造販売者は確認試験の実施が必要となる。

イデラリシブは添付文書の警告表示に、本剤の投与患者で肝毒性、下痢、腸の炎症(腸炎)、肺の炎症(肺炎)、腸穿孔などの致死性および重篤な有害作用を発現する可能性があることを、患者および医療従事者に向け注意事項として記載している。イデラリシブはまた、本剤を処方する可能性のある医療従事者に対し、リスクに関する情報を十分に提供することを目的とした情報伝達計画であるリスク評価・軽減戦略(Risk Evaluation and Mitigation Strategy:REMS)を適用して承認されている。

主な副作用では、下痢、熱(発熱)、倦怠感、悪心、咳、肺炎、腹痛、悪寒、発疹などがみられた。また臨床検査値異常では、白血球細胞数減少(好中球減少)、血中トリグリセリド値上昇(高トリグリセリド血症)、高血糖値(高血糖症)、肝酵素上昇などが多くみられた。

イデラリシブは、米国カリフォルニア州フォスターシティに拠点を置くGilead Sciences社により製造販売されている。リツキシマブおよびオビヌツズマブはRocheグループ企業でありカリフォルニア州南サンフランシスコに拠点を置くGenentech社により製造販売されている。イブルチニブはカリフォルニア州サニーベールに拠点を置くPharmacyclics社およびニュージャージー州ラリタンに拠点を置くJanssen Biotech社の共同開発品である。オファツムマブはノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークに拠点を置くGlaxoSmithKline社により製造販売されている。

翻訳担当者 菅原宣志

監修 吉原 哲(コロンビア大学CCTI 血液内科)

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