イブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用療法は高リスク白血病(CLL)に有効
米国癌学会(AACR)
一般的に予後不良につながる高リスク遺伝学的特徴を有するか否かにかかわらず、慢性リンパ性白血病(CLL)患者において、初回治療(一次治療)にイブルチニブ(販売名:イムブルビカ)+ベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)を併用することにより、高い奏効率と生存期間が示されたことが、米国癌学会(AACR)の学術誌Clinical Cancer Researchに発表された。
17p欠失、TP53遺伝子の変異、免疫グロブリン重鎖(IGHV)遺伝子変異と定義される高リスクCLL患者は、これら遺伝学的特徴を有さないCLL患者よりも病勢進行および死亡リスクが従来から高かった。高リスクCLL患者は、長年にわたって、CLLの以前の標準治療法であった化学免疫療法では奏効しないため、治療選択肢は限られていた。
慢性リンパ性白血病(CLL)の標準治療については、最近、化学免疫療法から、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬やBCL-2阻害薬とCD20を標的とする抗体薬を併用/非併用する一次標的治療法に移行している、とJohn Allan医学博士(Weill Cornell Medicine、臨床医学准教授)は説明する。
既報のAllan氏らの第2相CAPTIVATE試験結果においては、CLL患者に対してBTK阻害薬イブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用を一次治療で行うことにより、持続的な奏効が認められた。継続投与とは対照的に、固定期間併用療法は、限られた期間投与し、毒性や治療抵抗性のリスクを軽減する。
本試験結果から、イブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用療法はCLLの一次治療として有益であることが示唆されたが、高リスクCLL患者に対する本治療法の有益性は依然として不明であった。
Allan氏は次のように説明する。「高リスク遺伝学的特徴は治療選択に影響します。だからこそ、高リスクのCLL患者にイブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用する有効性を理解することは、本治療法が高リスクのCLLの一次治療アルゴリズムにどのように適合するかということを判断するために重要なことなのです」。
本発表では、CAPTIVATE試験でイブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用療法を受けた患者のうち、試験開始時より遺伝学的特徴のリスクが判明している患者集団の予後が明らかにされている。この患者集団195人のうち、129人が高リスク、66人が低リスクのCLLであった。
慢性リンパ性白血病(CLL)に高リスク遺伝学的特徴があるか否かにかかわらず、患者の95%以上が本併用療法に奏効し、高リスクのCLL患者では61%、高リスクでないCLL患者では53%が完全奏効を示した。
高リスクCLL患者では88%、高リスクCLLでない患者では92%において、36カ月以上の無増悪生存期間(PFS)が認められた。さらに、高リスクCLL患者の95%以上は、治療開始から36カ月後も生存していた。
Allan氏は次のように語った。「既報のCAPTIVATE試験の結果では、CLLの一次治療に用いたイブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用治療後に、深い奏効および持続的奏効による持続的無増悪生存期間(PFS)が認められました。本解析は、これら臨床上の結果に基づいており、それが高リスク遺伝学的特徴を有するCLL患者においても早い段階で維持されていたということを示しています。より長期的な予後を理解するためにはさらなる追跡調査が必要ですが、今回の結果により、イブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用治療は、本患者集団に対する治療法として示唆されました」。
Allan氏によれば、本試験の結果は、別の標的治療法による過去データと比較して良好ではあったものの、患者集団や試験デザインの違いから直接比較することはできないとのことである。
イブルチニブ+ベネトクラクスの固定期間併用治療については、高リスク遺伝学的特徴の有無にかかわらず、有害事象は同様に認められた、とAllan氏は付け加えた。特に多くみられた有害事象は、両群とも下痢、好中球減少、悪心、関節痛であった。重篤な有害事象については、高リスクCLL患者では22%、高リスクでない患者では21%に認められた。
本試験の限界は、本試験が探索的なものであり、高リスクCLLの遺伝学的特徴を有する患者と有さない患者との統計的比較を行うための検出力がないことである。
- 監訳 佐々木裕哉((血液内科/筑波大学血液内科)
- 翻訳担当者 平 千鶴
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- 原文掲載日 2023/06/07
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