【ESMO26】子宮体がんにサシツズマブ・チルモテカンの臨床的有用性の最新報告
一次治療としてのペムブロリズマブ単剤療法に関するデータも発表
子宮内膜がん治療の新たな転換期を迎えるなか、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2026)のプレジデンシャル・シンポジウムにおいて、進行・再発子宮内膜がん(子宮体がん)の治療戦略を塗り替える重要な臨床試験データが2件発表された。二次治療以降における抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)の有効性と、一次治療における免疫療法単剤の長期成績が示され、今後の臨床現場における標準治療のあり方に大きな影響を与えうる。
化学療法および免疫チェックポイント阻害薬による治療歴がある進行・再発子宮内膜がん患者を対象とした国際共同第3相試験である TroFuse-005/ENGOT-en23/GOG-3095試験では、TROP2を標的とするADCであるサシツズマブ・チルモテカン(Sac-TMT)群386名と、医師選択の治療群390名の計776名が比較された。
その結果、主要評価項目の一つである無増悪生存期間(PFS)中央値は、Sac-TMT群が7.2ヶ月となり、医師選択治療群の3.9ヶ月と比較して有意な延長を示した(ハザード比0.59、p<0.0001)。12ヶ月PFS率も、Sac-TMT群の29.4%に対し医師選択治療群は12.4%であった。
もう一つの主要評価項目である全生存期間(OS)の中央値についても、Sac-TMT群が19.0ヶ月、TPC群が12.1ヶ月で、サシツズマブ・チルモテカン(Sac-TMT)群が死亡リスクを32%低減(ハザード比0.68、p=0.0001)、約7ヶ月の生存期間延長が確認された。12ヶ月全生存(OS)率はそれぞれ63.4%と50.8%であった。安全性に関しては、グレード3以上の治療関連有害事象の発現率がサシツズマブ・チルモテカン群で54.4%、医師選択治療群は41.4%であり、貧血(71.4%)、口内炎・口内粘膜炎(57.0%)、好中球減少(41.1%)などの管理が求められる結果となった。
登録患者の約85%がミスマッチ修復欠損(pMMR)疾患であり、約80%でTROP2が中等度〜高発現していた点に言及し、1年時点での進行・再発リスクの約40%低減は非常に意義深いと、ナバラ大学クリニックがんセンターのAntonio González-Martín医師は評価している。
また、同シンポジウムでは、dMMRの進行・再発子宮内膜がんの一次治療を評価した第III相 KEYNOTE-C93/GOG-3064/ENGOT-en15試験の36ヶ月PFS解析結果も発表された。一次治療としてのペムブロリズマブ(キイトルーダ)単剤療法は、プラチナ製剤併用化学療法と比較して、36ヶ月PFS率が52.8%対30.0%と、統計学的に有意かつ臨床的に意味のある改善を示した(ハザード比0.57、p=0.0002、中央値は38.2ヶ月対8.4ヶ月)。全生存(OS)中央値は双方ともに未到達であり、36ヶ月時点でのOS率は70.7%対62.0%(ハザード比0.77、p=0.1000)であったが、化学療法群の約85%が試験内または試験外でペムブロリズマブへ移行(クロスオーバー)したことが影響したとみられている。
「全生存(OS)の結果は、クロスオーバー率の高さによって影響を受けた可能性が高いですが、治療間の重要な違いは、ペムブロリズマブの方がプラチナ製剤併用化学療法より奏効期間が長く、長期的に見て病勢コントロールが優れている点です。比較対象群であるプラチナ製剤併用化学療法単独が時代遅れになっていることが重要な問題です」と、同氏は述べている。
今回の学会発表を通じて、子宮内膜がんの治療体系は大きな過渡期を迎えている。dMMR領域においては免疫療法薬単剤への移行がさらに強まり、治療選択肢が限られていた化学療法・免疫チェックポイント阻害薬治療後の患者群においてはサシツズマブ・チルモテカン(Sac-TMT)をはじめとする抗体薬物複合体(ADC)が新たな標準治療として確立されつつある。今後はpMMR/MSS領域をターゲットとして、免疫療法薬とADCなどの標的薬を組み合わせた臨床試験、すなわち一次治療維持療法としてのTroFuse-033/GOG-3119/ENGOT-en29試験やBEHOLD-Endometrial02/GOG-3130/ENGOT-en33試験などの進展が期待されている。
- 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療研究センター病院乳腺・腫瘍内科)
- 記事担当 野中希
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- 原文掲載日 2026/10
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