多発性進行癌治療における重要な進展とHPV関連癌リスクへの新たな知見

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Kelly Baldwin
312-949-3232
kelly.baldwin@asco.org

黒色腫、卵巣癌、結腸直腸癌治療に関する新たな進展が米国臨床腫瘍学会(ASCO)の第49回年次総会にて発表された。研究者らは、HPV陽性頭頸部癌患者とパートナー間のHPV感染に関し安心感を与えるような知見も発表した。

「本日発表された研究は、従来の治療法に耐性を持つ進行癌に対する、われわれの進歩を説明している。新たな分子標的薬、免疫療法薬が、これら困難な疾患の進行を止めるための実行可能な戦略として出現しつつある。」と記者会見で司会を務めたASCOの癌情報委員会のメンバーであり、デラウェア州ニューワークにあるHelen F. Graham癌センターの腫瘍内科医であるGregory Masters医学博士(FACP)は述べている。「そしてある研究は、一般集団と比較してHPV陽性中咽頭癌患者のパートナーのHPV経口感染は増加していないことを示唆している。」

重要な研究結果は以下の通り

・パゾパニブでの維持療法は、進行卵巣癌の女性における再発を遅らせる。これは、初回化学療法後にプラセボを投与した場合と比較してマルチターゲット型(※複数のたんぱく質に作用する)分子標的薬であるパゾパニブは、無病生存期間が5.6カ月延長するという進行卵巣癌女性に対して行った第3相臨床試験の結果によって明らかにされた。

・新たな免疫療法の併用は転移性黒色腫に対し有望である。このことは第2相臨床試験において、イピリムマブ(Yervoy)に、白血球増殖因子として広く用いられているGM-CSF(サルグラモスティン、リューカイン)を加えると、イピリムマブ単独に比べて、全生存期間を延長することが分かった。このGM-CSFとイピリムマブを併用するという初めての臨床試験によって、免疫療法アプローチを併用する概念は患者にとって有益となり得ることが確かなものとなった。

・試験中の抗PD-1抗体であるニボルマブは進行黒色腫患者において強力な抗癌活性を示す。つまり、この新たな免疫療法は、標準全身療法を受けたにも関わらず疾患が進行した患者に単剤で使用すると極めて有効であることが、期間を延長した長期的な二ボルマブの第1相臨床試験での試験結果によって示されている。腫瘍収縮割合および全生存期間中央値は、同条件における従来の免疫療法の収縮割合と比較して、著しく改善された。

・早期段階の臨床試験で、セルメチニブが進行眼内黒色腫に対し最初の有効な薬剤となる可能性があることが示唆されている。これは、第2相臨床試験にて、分子標的薬セルメチニブは、GbaqおよびGna11遺伝子異常を有する進行眼内黒色腫の患者において強力な臨床効果を示すということが報告されている。

・HPV関連中咽頭癌患者のパートナーのHPV経口感染率は増加していない。
このことは、HPV陽性中咽頭癌患者およびそのパートナーの試験から得られた結果が示すように、一般集団と比較して、パートナーのHPV感染は増加しているわけではなく、HPV関連中咽頭癌発症のリスクは低いままである。数年間生活を共にしたカップルは、パートナーがHPV陽性中咽頭癌の診断を受けたからといって、性的習慣を変える必要はないということに安心できるであろう。

・セツキシマブは、転移性大腸癌に対するFOLFIRIとの併用による一次治療として、ベバシズマブよりも優れている。これは、第3相臨床試験において、一次治療であるセツキシマブ(アービタックス)+FOLFIRI は、ベバシズマブ(アバスチン)+FOLFIRIと比較して、およそ4カ月の生存期間の延長につながることがわかったからである。両併用療法は現在KRAS遺伝子変異のない進行大腸癌に対して使用されているが、これらの新たな結果によって、セツキシマブはFOLFIRIとの併用による一次治療で使用される場合に良い選択枝となることが示された。

翻訳担当者 滝川俊和

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部)

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