HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)

トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカン(販売名:エンハーツ)の新たな試験において、研究者らはいくつかのがん種において有望な奏効と長期にわたる臨床的有用性を観察した。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターが主導した第2相DESTINY-PanTumor02試験の中間解析から得られたこれらのデータは、本日、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で発表された。

本治療により、HER2発現レベルが最も高い患者群において、奏効率(ORR)は61.3%、奏効期間(DOR)中央値は22.1カ月を達成した。全患者では、それぞれ37.1%、11.8カ月であった。胆道がん(22%)と膵臓がん(4%)を除くすべてのがん種で30%以上の奏効率が認められた。

筆頭著者で、がん治療薬研究(Investigational Cancer Therapeutics)部門長のFunda Meric-Bernstam医師によれば、種を問わない全てのがん腫における本結果は、臨床ニーズが満たされていない重要な領域で有望である。

「これらの結果は、前治療の多い集団、特に婦人科がんの患者とHER2発現レベルの高い患者において、非常に注目すべき結果である」とMeric-Bernstam医師は述べた。

抗体薬物複合体は、抗体を利用して特定のタンパク(この場合はHER2)に標的を定めて結合し、化学療法を細胞に直接送達することによって機能する。トラスツズマブ デルクステカンはHER2発現乳がんに対して承認されており、米国ではHER2陽性胃がんとHER2変異肺がんに対して承認された唯一の抗体薬物複合体である。しかし、HER2は他のいくつかのがん種でも発現している。

本国際共同非盲検試験は、HER2発現の局所進行または転移がん患者におけるトラスツズマブ デルクステカンの抗腫瘍活性を評価するためにデザインされた。本試験には、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、胆道がん、膵臓がん、膀胱がん、およびその他の腫瘍の患者267人が参加した。

HER2発現レベルは免疫組織化学(IHC)検査によって測定された。中央検査で、75人の患者がIHC 3+(最高レベルのHER2発現)を示し、125人がIHC 2+を示した。ほとんどの患者は女性(67%)で、平均年齢は62歳、前治療歴の中央値は二次治療であった。患者の人種は白人61%、アジア系32.6%、その他または未報告4.15%であった。

グレード3以上の治療関連有害事象は全患者の38.6%に発現し、特に多かったのは悪心、疲労、細胞減少であった。合計で8.2%の患者が薬剤関連の有害事象により治療を中止した。安全性プロファイルはトラスツズマブ デルクステカンの過去の臨床試験と一致していた。

「われわれのデータは、HER2発現が多くのがん種において治療につながることを示している。トラスツズマブ デルクステカンは、多くの患者において奏効が延長し病勢が安定化するなど、腫瘍の種類を問わず説得力のある臨床活性を示した」と、Meric-Bernstam医師は述べた。「これは、現在選択肢が非常に限られているか、あるいは全くない進行した病変や治療困難なHER2陽性がん患者に対して、新たな治療選択肢を提供するのに役立つ可能性があります」。

この試験は現在も進行中で、数人の患者が治療を受けている。無増悪生存期間と全生存期間については、今後の追跡調査により解析される予定である。

本試験は第一三共株式会社と共同でアストラゼネカ株式会社の支援を受けている。共同研究著者および開示情報の全リストは、アブストラクトとともにこちらを参照。

  • 監訳 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
  • 翻訳担当者 河合加奈
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  • 原文掲載日 2023/06/05

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