進行卵巣がんにオラパリブ、デュルバルマブの追加投与は無増悪生存期間を延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)

ASCOの見解

「卵巣がんの早期発見法はなく、3分の2以上の患者が、再発のおそれが高い進行した状態で診断されます。さらなる研究が必要ですが、治療薬の新たな組み合わせにより無増悪生存期間が延長したという本試験の結果は、進行卵巣がんにとって実に有望です」と、ASCO専門家のMerry Jennifer Markham医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー) は述べている。

新たに診断されたBRCA遺伝子変異がない進行卵巣がんで、標準治療に加えてデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)とオラパリブ(販売名:リムパーザ)とを投与した場合、標準治療のみの場合と比較して無増悪生存期間が改善したことが、国際第3相ランダム化臨床試験DUO-Oの中間解析から明らかになった。本試験は、米国臨床腫瘍学会年次総会2023(ASCO2023)で発表される。

進行卵巣がん試験要旨

目的新たに診断された進行卵巣がんに対する新規併用療法の有効性
対象者ステージIIIまたはIVの悪性度の高い上皮性腫瘍で、BRCA変異はなく、相同組換え修復欠損(HRD*)陽性または陰性の患者1130人の多国籍グループ。患者は腫瘍減量手術をすでに受けたか、受ける予定であった。
(*HRD・・・DNA二本鎖切断を効果的に修復できない状態)
結果患者は、3群のうちの1つに無作為に割り付けられた。すべての群で、標準治療であるパクリタキセル/カルボプラチン化学療法とベバシズマブ(販売名:アバスチン)の併用療法を実施し、その後、ベバシズマブの維持療法を実施した。2群および3群では、デュルバルマブが先行治療と維持療法に追加された。また3群ではさらに維持療法にオラパリブが追加された。中間解析の結果は以下の通り:

・中間解析の時点で、標準治療群とデュルバルマブ群の間で無増悪生存期間(PFS)に有意差はみられなかった。

・デュルバルマブ+オラパリブ群では、標準治療群に比べPFSが延長した:
 
 HRD陽性患者のPFSは37.3カ月、標準治療群23カ月だった。
 
 ​​包括(ITT)解析では、オラパリブ群24.2カ月vs標準治療群19.3カ月だった(包括解析では、実際に受けた治療にかかわらず最初の割り付けどおりに解析を行う)。
 
 デュルバルマブ+オラパリブ群では、標準治療群と比較して病勢進行リスクがHRD陽性患者で51%、包括解析の患者で37%低かった。
 
 また、標準治療群と比較して、HRD陽性および陰性を含むすべてのサブセットで、病勢進行リスクが32%低かった。
 
 約90%の患者が試験のレジメンを完了した。重篤な有害事象は、標準治療群で34%、デュルバルマブ群で43%、オラパリブ群で39%の患者で報告された。
重要性米国食品医薬品局(FDA)は、2014年以降、それ以前の60年間を合わせたよりも多くの卵巣がん治療薬を承認してきた。しかし、再発率は依然として高く、平均で2年程度である。デュルバルマブとオラパリブの標準治療への追加により確認された、PFSの延長と死亡リスクの低下は、卵巣がん患者にとって価値ある前進である。

主な知見

本試験において、BRCA遺伝子変異がなく悪性度の高い進行上皮性卵巣がんの新規診断患者で、標準治療(パクリタキセル/カルボプラチンとベバシズマブ先行投与またはベバシズマブ維持投与)に加えてデュルバルマブの先行投与およびデュルバルマブの維持投与、さらにオラパリブの維持投与を行った場合、標準治療と比較してPFSが改善した。デュルバルマブ+オラパリブ群のHRD陽性腫瘍の患者のうち、病勢進行リスクは標準治療と比較して51%減少した。また、デュルバルマブ+オラパリブ投与を受けた包括解析対象群では、標準治療と比較して、病勢進行リスクが37%減少した。 デュルバルマブ+オラパリブ投与群では、標準治療群に比べ、HRD陽性および陰性患者を含むすべてのサブセットで、病勢進行リスクが32%減少した。

「進行卵巣がんの患者には大きな進歩がありましたが、依然として有効な治療のない疾患です。今回の試験結果は、病気が進行した患者に新たな治療法を見つけることができるという前向きな証拠を示しました」と、ドイツ・エッセンのEvangelische Kliniken Essen-Mitte病院の婦人科および婦人科腫瘍科長であるPhilipp Harter医学博士は述べた。

2023年に米国で新たに診断される卵巣がんは推定19,710例、この病気による死亡は推定13,270例である。 卵巣がんの全症例のうち、早期に発見されるのはわずか20%であり、ステージ3以上で発見された場合、生存率は30%まで下がる。卵巣がんと診断される患者の約半数は63歳以上であり、黒人よりも白人に多く見られる1

進行卵巣がん標準治療にリムパーザ、イミフィンジ追加投与試験本試験について

現在の標準治療は、化学療法(パクリタキセル/カルボプラチン)と血管新生阻害剤であるベバシズマブである。デュルバルマブはチェックポイント阻害剤、オラパリブはPARP阻害剤であり、特定の細胞修復機構を阻害する。最近の2つの研究により、オラパリブの維持療法がBRCA変異を持つ新規診断患者に有効であること、およびベバシズマブがHRD陽性腫瘍に有効であることが示された。HRD陽性腫瘍ではがん細胞が自己修復しにくいため、PARP阻害剤などの特定の治療が有効である可能性が高くなる。そこで研究者らは、ベバシズマブとデュルバルマブの新規併用療法に加え、維持療法レジメンにオラパリブを追加し、抗腫瘍効果を高めることができないか検討した。

次のステップ

研究者は、次の解析で全生存期間とその他の副次評価項目を正式に評価する。 

本試験は、アストラゼネカ社から資金提供を受けた。

  • 監訳 高濱隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2023/06/03

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